帰宅してすぐに開いた手紙

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(一枚目) 「ごめんなさい、同窓会には行けません」という君の返事には、みんな寂しく思ったようです。  なにしろ、僕らの担任だった、みんなが大変お世話になった名教師である光島先生が、君と生きて会えるチャンスは同窓会の日が最後だったのですから。  結論から言うと、先生は亡くなってしまいました。  先生が持病の悪化でずっと車椅子生活を送っており、すっかりやせ細って、余命いくばくもなかったことは君も聞いている通りです。  僕たちは先生に、これ以上苦しんで欲しくなかった。  だから先生を同窓会の会場に呼び出して、集まった四十人みんなで示し合わせて、毒を盛って殺したのです。  そしてその体を液体窒素で凍らせ、ノコギリでバラバラに解体したのです。  先生の体重が約六十キロだとすると(もうそんなになかったでしょうが)、一人約一~二キロ程度のパーツを持ち帰って処理すれば、証拠隠滅は簡単です。  パーツに分けたというのは、つまりそういうことでなのでした。  ある者は 「おれは先生を冷凍庫に保管して、ずっと一緒にいるぞ」  と言い、またある者は 「私は夫に隠し通せる気がしないから、どこかで先生のパーツを捨てると思う。ごめんなさい、先生」  と泣きました。  先生がいかに慕われていたか、よく分かりますよね。  そして会のお開きの時、誰かが 「もう一回だけ、バラバラに持ち帰る前に、先生のご存命の時の姿を見たいなあ」  と言うので、僕らは立体ジグソーパズルよろしく、先生を組み立て直しました。  出来上がった先生は、隙間がきれいにピッタリと埋まり、一度バラバラになったのが嘘のようで、まるで生きているみたいでした。  確かに、本当に、今にも動き出しそうに見えたのです。  僕たちは涙をこぼしながら、口々に先生への感謝の思いを口にして、そろって天を仰いだのでした。
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