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BFF
学校へ行くと、既にリツが来ていた。
「おはよー♪持ってきた?」
「うん♪」
お互いの手紙を、見せ合った。
ふたりとも別々のことが掛かれていた。リツはファンクラブに入っていたが、そのこともちゃんと調べてお礼が書いてあった。
「なんか…感動だよね♪」
あたしとリツはうっとりとしていた。
「うん。夢の続きを見てるみたい!」
空がいつものように不機嫌そうに席についた。
「そうだ。今週の週末、うちに泊まりに来ない?」
以前から話し合っていたが、なかなかふたりの都合がつかなかった。
「えっ。ほんと?良いの?」
リツは、何度かうちに来たことがあったが、パパがいつも居ない時だった。
「うん。パジャマパーティーしよう!」
リツにはうちの事情がバレても良いような気がした。
「お菓子食べて、映画観よう!」
「わーっ楽しそう♪一緒にお風呂も入っちゃう?」
あたしたちはキャッキャとはしゃいでいた。リツがクラスメートに呼ばれた。
リツが去ってから、空があたしに話しかけてきた。
「お前、遊んでて良いのか?中間テストが、もうすぐだって言うのに。」
「あなたに心配されなくっても大丈夫です。」
「まぁせいぜい俺に、馬鹿認定されないように頑張れ。」
…何よその言い方。
「もしあたしが総合点数で勝ったら、声掛けないでくれる?」
「じゃあ俺が勝ったらお前は、俺に何してくれんの?」
空が鼻で笑った。あたしはちょっと考えた。
…あんたになんて何にもしたく無いわよ。
「…お前んちのトーフ見せて。」
空が、真面目な顔で言った。
「えーっ写真で良いじゃん。何でうちにまで来る必要があるのよ?」
「お前、俺に勝つんだろ?だったら良いじゃん。」
…確かに。こいつの言う通りだ。
「じゃぁそれで良いよ。」
先生が入ってきた。
「その言葉忘れんなよ。」
じゃぁ授業始めるぞーと言うと、すぐに出席を取り始めた。
…それはこっちのセリフだ!バーカッ!
あたしは、そそくさと教科書を開いた。
♬*.:*¸¸
リツが、あたしの家に泊まりに来てくれた。リツが持ってきてくれた。PrototypeのライブDVDを一緒に観た。
お菓子を食べながら、ふたりで色々な話をした。
「ねぇ、華の好きな人ってさ、伏見くんでしょ?」
リツが言った。
「なっ…なんで?」
あたしは、自分でもよく分からなかった。
「だってさ、いっつも楽しそうに話をしているでしょう?」
「うん。真啓くん優しいから。何でも話せる男友達みたいな感じかなぁ。」
スナック菓子の袋に手を入れて、何個か口に放り込んだ。
「華さん…それって恋じゃ無いんですかね?」
ふざけていたリツが、少し真面目になった。
「リツさん…多分恋ではありません。」
…一緒に居ると居心地は良いけれど、友達だ。
「えーっなんでよ?お似合いのカップルだと思うよ?」
「あたしが好きでも、向こうが好きかどうか分からないもの。」
好き?恋?あたしにはまだ良く判らない。
「あたしこの間、聞いたって言ったでしょう?」
「えっ。」
あたしは慌てた。
「華のこと好き?って。」
顔が赤くなるのが自分でも判った。
「そしたら、伏見くん…”うん。好きだよ。“って、恥ずかしそうに言ってたもん。」
「えーっ。ちょっとやだ。どーしてそんなこと勝手に聞いちゃうの?」
真啓は時々うちに遊びに来る。あたしと夏と3人でよく勉強をした。
「だって華が、伏見くんのこと好きだと思っていたから。」
「次に会う時に、緊張するじゃない。」
「大丈夫よ。華も伏見くんのことが気になってるみたいだよって言っといたから。」
「もーっ!リツの馬鹿ッ!!」
あたしは、リツの肩をバシバシ叩いた。
「でも伏見くん…”本当にそうだったら嬉しいな”って笑ってた。」
駄目だ…そんなこと言われたら、絶対に意識しちゃうじゃない。
ママが部屋に入ってきて、アイスティーを持ってきた。
「あら あなたたち夕飯の前にお菓子なんか食べて…ご飯食べられなくなるわよ。もうすぐガクさんだって帰って来るわ。」
「はぁい。」
そうだ…いない筈だったパパは、勤務の都合で、今日は早く帰ってくるって言ってた。
「ガクさんって誰?」
リツが聞いた。
…リツには何も話していないんだった。
「リツ…今から言う事を、学校の誰にも言わないでくれる?」
あたしは、言葉を選びながらゆっくりと話した。
「うん…良いけど…?」
思ってた以上にあたしが、真面目な顔をしたので、リツは緊張したようだった。
「あのね…あたしには2人のお父さんが居るの。」
「ん?」
リツは、困惑の表情を浮かべた。
「ママが好きになった人が二人いて、どちらも選べなかったから、お母さんは、“ナイエン関係”で3人で暮らす様になって、あたしと夏を産んだの。」
リツの顔に、はてなマークがいっぱいついてた。
「華のママって、看護師さんでしょ?この間のお父さんは…華のお父さん…よね?」
「ママは人工授精して、麻酔科医のダディが、私のほんとのお父さんで、夏は脳外科医のパパがお父さんなの。お母さんは、ふたりとも一緒で二卵性双生児としてあたし達を産んだの。」
「え…っと…でも…学校では、いとこだって…」
小学校の頃から色々あって、私の家族は、そ~いうことにしてた。
「うん。あんまり人に詮索されるのも面倒でしょうからって、夏は脳外科医のパパの姓、あたしは麻酔科医のパパの姓を名乗っているってわけ。」
「なんか…色々…複雑なんだね。」
リツは、少し考えこんでから言った。
「ううん。そんなこと無いよ。みんな仲良く暮らしてるもの。」
「学校の先生は、知ってるんでしょう?」
「うん。知ってる。」
「でもなんか変よね。同じ学校通ってて、しかも双子なのに、別々の姓だなんて。」
時々、仲が良すぎて兄弟?って言われることもあるけど、誰にでも、夏は私の従弟って今までは説明してて、多分真啓だけは、あたし達の事情を知ってる気がする。
「小さい頃からそうだったから、違和感ない。」
そうだあたしの家ではこれが普通。
ご飯が出来ましたよーっと、ママがあたしたちを呼んだ。
ダイニングへ行くとパパも帰って来ていた。久しぶりに家族全員揃っての夕食だ。
「今日はいつもより沢山料理が並んでいると思ったら、そういうことだったんですね。」
リツは、パパに挨拶をした。
「初めまして。いつも華…さんに、同じクラスで友人の岩田 利津です。」
ふたりは会うのが初めてだったが、あたしが良くリツの話を家でするので、名前だけは知っていた。
「君がリツさん?いつも華ちゃんがお世話になっています。可愛い人ですね。」
パパが、ママの顔とリツの顔を交互にみながら、優しい笑った。
「いえいえ…可愛い…なんて…そんなこと無いです。こちらこそ…です。」
リツは、緊張していたが、夏の顔を見てホッとしたようだった。あたしは直接聞いたことは無いけれど、リツは夏のことが気になるのかも…。
「こんばんは。小鳥遊くん。」
「いらっしゃい。どおりで騒がしいと思ったら、リツちゃんが来てたんだね。」
夏は、席につきながら言った。リツとは、教科書の貸し借りや、時々一緒にみんなでお弁当を食べたりしてたし、夏とリツは、観る映画やドラマも似てて、仲が良かった。
「小鳥遊くん…そういえば伏見くんは、今度いつ来るの?」
リツが、唐突に聞いたので、あたしは慌ててリツを肘でつついた。
「いつもテストの前には来るかなぁ。どうして?」
皆は、頂きますと食べ始めた。
「華が、伏見くんのこ…と…。」
…あわわわ。何を言い出すの?リツったら!
「あの…あの…リツが、4人で勉強したいんですって!」
「別に…良いけど。真啓に聞いておくよ。」
ひとりでドキドキしていた。ダディが、そんなあたしのことをじっと見ていた。
「そうだよ…古水流くんより、いい点とるんでしょ?」
ダディとパパがあたしを見た。ふたりとも男の子の名前が出るだけで、すぐに反応するんだから…。
「嫌なヤツなの。前にも話したでしょう? “はなったれ華”ってあたしのこと呼ぶ、男子がいるって。」
「ああ…ザ・シャードくんね。」
パパが、静かに言った。
「ザ・シャード?」
リツが聞いた。
「あいつのあだ名。無駄に背がでかいから。ザ・シャードってね、イギリスで一番高い建物なの。」
「あぁ。古水流くんイギリス育ちだからか?」
「うん。」
「あははは…面白いね。今度から使わせて貰おうっと♪」
食事が終わるか終わらないかの頃に、トーフがどこからともなくやって来た。
「あ。この子がトーフくんね。写真より毛並みが綺麗だし、とってもハンサムなお猫様だねぇ。」
トーフは、あたしの足にゴロゴロと喉を鳴らしながら纏わりついた。
「華ちゃんに何故かよくなついているのよ。」
ママが笑うと、ママの所へとトーフはご挨拶に行った。
「そうなんだよ。コイツを家に連れてきたのは、俺なのに、華に懐いてるんだよ。」
そして隣に座る夏が、撫でようとすると、ふらりとよけて、あたしの所へと戻って来た。
「昼間はどこかに隠れてるのよ。変でしょう?でもこの時間になるとどこからともなく出てくるの。夜は、ちゃんとあたしのベッドに入って寝るの。」
「へーっ。賢いんだねぇ。」
リツが、足元のトーフを眺めながら笑った。
――― にゃーにゃー。
あたしの顔をじっと見て、トーフがないた。
夕食後みんなでカードゲームをして遊んだ。
それに飽きると、お風呂に入り、あたしの寝室で過ごした。
キングサイズのベッドに、ふたりで潜り込んだ。
「ねぇ。華は将来何になりたいの?やっぱりお医者さん?」
「うん。パパ達みたいなお医者さんになりたい。子供が好きだから小児科医になりたいなぁ。それが駄目なら保母さん。」
「そっか。華は頭も良いしきっとなれるよ。」
リツは、あたしの方を向いて言った。
「頑張って勉強しなきゃ…で、リツは何になりたいの?」
真っ暗闇でリツと話すのは不思議な感じがした。
「あたしは弁護士…だけど、華と違ってあたし頭悪いからなぁ。」
「そんなこと無いよ!きっとなれるよ。」
高校卒業まであと2年ある、その間に頑張れば…。
「でも…リツと同じ大学行きたいな。」「華と同じ大学へ行きたい。」
ふたりとも同じことを同時に言ったので驚いた。
「あははは…考えてること同じだった。」
あたしは、リツも同じことを考えて居たなんて、とっても嬉しかった。
「これからもふたりはBFFだね。」
あたし達の関係はこの言葉がぴったりだと思った。
「BFF?」
リツが考え込んだ。
「”Best Friend Forever “の略。」
「ほんとに…ホントにそんな感じ。」
リツは忘れないように…とBFFと繰り返し囁いていた。
「それにしてもどうして空は、華だけにきついんだろうね?」
「お互いに、嫌いだからよ。」
あたしはリツと向かい合わせて話をしていた。
「空のファンクラブの女の子達も性格悪い人が多いし。きっと、性格が悪いものは、引き寄せられる運命なんだよ。」
あたしが、物知り顔で言ったのでリツが笑った。
「それじゃ、華も、性格が悪いってコト?喧嘩しながら仲良さそうだもん。」
リツは意地悪く笑った。
「性格の悪いあたしと一緒に居るって事は、リツだって、性格が悪いって事じゃん。」
あたしとリツは、なんだかおかしくなって笑った。
夜遅くまでくだらないことを話し、結局寝たのは明け方近かった。
起きたのは昼過ぎ。
あたしたちは、ダディと一緒にお買い物をしにいく予定だった。
「静さん、あんまり華ちゃんを甘やかさないでね。」
ママは、それが口癖だった。
ママに頼んでも駄目なものは、パパ、それでも駄目ならダディに頼む。
ホントは、パパが行きたかったらしいけど、緊急オペで呼ばれてしまったので、ダディが、あたし達について来てくれることになった。
「ねえ…華ちゃんのお父さんって、若くてカッコ良いよね?夏パパは、渋い感じ♪どちらも素敵。」
…あたしもそう思う。
「若くは無いよ…40代だし。」
「そっかぁ。言われてみればあたし達ぐらいの子供が居るんだもんね。それぐらいか…でも見えなぁい。」
ダディを真ん中にして、両サイドはリツとあたしで歩いていた。
通り過ぎる女の人たちが、ダディのことを、ちらちら見ていくのにリツが気がついた。
「今日はダディに何を買って貰っちゃおうかなぁ。」
あたしは、ダディの腕を掴んで歩いた。
「トーコさんに釘を刺されてるんだから、あんまりいっぱいは駄目だよ?」
ダディは、ニコニコいつも嬉しそうだった。
「あたしちょっとCD見てくる!!」
「じゃぁ…あたしはあっちの洋服屋さんにダディと一緒に行ってくるね♪」
あたしとリツは、ちょっとだけ別行動になった。
「華さんは、伏見くんのことが好きなの?」
ダディが突然あたしに聞いた。こういうことに関して、とても勘が鋭い。
「ううん。ただの友達だよ。」
ダディかパパと居る時しか入らない、ちょっと高めのセレクトショップ。
メンズとレディース両方置いてあるお店だ。
「いつも言ってるでしょ?あたしの理想はパパやダディみたいな人だって。」
ダディは微笑んだ。
「うん。それは判ってるけど。伏見くんって、ガクさんにも気に入られてるし、親切だし、レディーファーストが出来る良い青年だと思うけどなぁ。」
あたしの顔を、じっと観察するように見つめた。
「うーん…でも、あたしは、男の子が好きとか良く判らないの。」
…レンアイよりも、友情だ。
「華ちゃんは、ゆっくり大きくなれば良いよ。」
ダディは、私の頭にキスをした。あたしは視線を感じて振り返った。
「あっ。」
思わず声をあげてしまった。
空が意地悪そうな笑みを浮かべて、隣の陳列棚からこちらを見ていた。
「華ちゃんどうしたの?知り合いかい?」
ダディが空をみて軽く会釈をすると、空は慌てて笑顔を浮かべた。
…猫かぶりめ。
「今泉さんはお買い物?」
…なぁ~にが、今泉さんだ、そんな風にあたしを呼んだことなんて一度も無いくせに。
「ええ。まあね。」
あたしは、愛想のかけらもみせない挨拶を交わした。
「ダディ…じゃなかったDad.こちら古水流 空くん。イギリスから来た転校生です。」
ダディは、空を仰ぎ見るようにして、宜しくねと人懐っこい笑顔を浮かべた後に、ちょっとあっちへ行ってくるねと…あたしから離れた。
…ダディ!気を効かせなくて良いから。
「お前父親のコト、ダディって呼んでるの?小学生かよ。」
空は、立ち去るパパの背中をみながら意地悪そうに笑った。
…言われると思ったから言い直したのに。
「良いじゃない。小さい頃あたしもアメリカに住んでたのっ!それからずっとそうなっちゃったのよ。」
「なんだ本当に親父だったんだ。若そうだから、不倫か援交相手かと思ったよ。」
…ひっどーい!
「あたしの事を色々言われるのは良いけど、父を侮辱するのは許せない!」
あたしは、空への怒りでブルブルと震えた。
「ほんと…サイテー!」
涙を必死で堪え声を荒げた、あたしを遠くで見てたダディが、慌ててやってきた。
「華ちゃん?大丈夫?」
ダディが、あたしの顔を心配そうにのぞき込んだ。
「もう行こうっ!」
あたしは、驚くダディの手をグイグイと引っ張って店を出た。
「わわ…そんなに引っ張らないで。一体どうしたんだい?」
「あいつったら…また酷いこと言ったの。」
あたしの怒りは収まらなかった。まぁ落ち着きなさいとダディは微笑んであたしの背中を撫でた。
「ダディの事、”援交相手だと思ったよ“だなんて、普通絶対言わないわよ。ちゃんと紹介したのに。」
あたしはCDショップまでいきリツを探した。
「ほっとけば良いさ。」
ダディは、静かに言った。
リツが、あたしの剣幕を見て何事かと駆け寄って来たので、さっき起きた出来事を話した。
「空ってそんな事言うの?信じられな~い!」
リツも、あいつに騙されてる一人だ。
「そうよ。サイテーでしょ?!ほんんっと大嫌い。」
あたしは思い出しただけでまた腹が立ってきた。
「絶対勝負に勝ってね!華なら大丈夫。」
リツが、あたしを一生懸命宥めてくれた。
「勝負?勝負って何。」
あたしは、ダディの腕にしがみ付きながら歩く。
「華は賭けをしたんです。華が勝ったら、二度と口を聞かない。もし空が勝ったら、トーフくんを見に来る。」
ダディは、面白そうに笑った。
「ちょっとダディ!笑い事じゃ無いんだからね。これからの学校生活の安寧がかかってるんだから。」
また華ちゃんは、大げさなんだからとダディはまた笑った。
「腹が立ったらお腹が空いちゃった。」
あたしが腕を掴むと、わわわっ危ないってばと、リツがよろけた。あたしを真ん中にして3人で腕を組んでちょっと奇妙な感じだった。
…男子よりも、こうやって女子と一緒に居る方が、全然楽しい♪
もう一軒、リツとあたしはお気に入りの店を覗いたおそろいのアクセサリーを買って出てくると、外で待っていたダディが、女の人2人連れに声を掛けられていた。
「あれ?華のお父さん…逆ナンされてる?!」
いつもの風景…若いころは、段ボールに何箱もチョコを貰って帰ってきた…と、ママが話していた。
ちょっと目を離すと、必ず女性に声を掛けられる。
「うん…いつものことだよ。ママが心配するから言わないけど、でもダディはママに一途だから浮気なんて絶対無いと思う。」
あたし達がじっと見ていると、ダディが気が付いてやって来た。
「待たせてごめんね…ご飯に誘われちゃったよ♪」
無邪気なダディが、あたしは大好きだ。
「リツちゃん、華ちゃんお昼は何を食べようか?」
ダディは、何事も無かったかのように、あたしたちと肩を並べて歩いた。
♬*.:*¸¸
あたしは、突然知らない女子に、昼休みに呼び出された。リツが、心配そうにこちらを見ている。
「今泉さん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
「なあに?」
「あなたって、小鳥遊君と付き合ってるの?」
あたしは、女子2人に呼び出された時点で、なんと無くそうだろうなぁと思ってた。
「付き合って無いわよ?どうして?」
「あなた達、仲良いし、いつも一緒に帰ってるから。」
多分、夏のことが好きなのはこの子達じゃ無くて、誰か別の子だろうな…と、なんと無く思った。
「あたしと夏は、従兄弟なの。」
こんな事がある度に、あたしは同じ説明をする。
「そう…分かったわ。小鳥遊君って、今付き合ってる人居るか知ってる?」
リツがこちらをじっと見てる。
「いないと思うけど。」
「じゃあ、好きな子は?」
「そういうことは、余り話さないから分からないけど、居るんじゃないかなぁ。」
ふたりは顔を見合わせてた。
「そう…ありがと。」
あたしは、教室へ戻った。
「夏に、彼女が居るか聞かれたの。」
「そう…。」
リツは、別に気にする様子も無かった。
「リツ?大丈夫?」
「なんで?別に平気だけど。」
「だったら…良いんだけど。」
リツが、夏のことが好きなら、友達として協力したいと思ったけど、本人が何も言わないのなら、仕方が無い。
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