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テスト前の勉強会
「明日、真啓の家でテスト勉強しようと思うんだけど、華も来るだろ?」
夏は、夕食時にママとダディに聞いた。パパは、いつものように仕事でまだ家に帰ってきてなかった。
「あら♪華さんも?珍しいわね。」
ダディが、あたしの顔をじーっと見てる。
「利津ちゃんも、さっきメールで聞いたら、大丈夫だって言ってた。」
…え。夏とリツって、メールやりとりしてたんだ。いつの間に?
「Dad?明日、真啓の家に、迎え来て欲しいんだけど?」
夏は、ダディのことをDadと呼ぶ。
「うん…それは、大丈夫だよ。」
あたしは、ダディの視線よりも、リツと夏が繋がってた事に驚いた。
「何か、手土産を考えなきゃね♪華さんケーキでも作る?」
「え…あ…うん。」
「混ぜて焼くだけだから、シフォンケーキなら、すぐできるわよ。」
夏が、今メッセージのやり取りをしてるのも、きっとリツだろう。夏は、時々笑いながら、返信してる。
「ねぇ…夏?いつから、夏はリツとメッセージのやりとりしてるの?」
「え…っと…この間、利津ちゃんが泊まりに来た時かなぁ…。」
スマホで、メッセージのやりとりで忙しそうな夏は、気もそぞろであたしに返事をした。
「夏さん?メールは、食事が終わってからにしなさい。」
ダディが、夏をたしなめた。
「う…ん。ちょっと利津ちゃんに、返事するだけだから…。」
「夏は、リツのことが好きなの?付き合ってるの?」
ダディとママが、同時に夏を見た。
「あ…仲の良い…友達…かな。話してて面白いし…。」
あ…利津ちゃんも、喜んでる。良かったな華…といってスマホをテーブルの上に置いた。みんなの視線が自分に集中してるのを見て、どうしたの?と夏が聞いた。
「ううん…何でもない。ちょっと気になっただけだから。”仲が良い”なら別にそれで良いんだ♪」
あたしは、頂きますと言ってご飯を食べ始めた、あたしを見て、ダディと、ママは顔を見合わせて、含み笑いをしてた。
♬*.:*¸¸
授業中から、あたしは楽しみだった。
…みんなで勉強が出来るなんて、放課後が待ち遠しい♪
「お前…今日ずっとニヤニヤしてて、気持ちが悪いんだけど?」
空が、あたしの顔を覗き込んだ。
「当たり前じゃない♪今日は、グループ・デートの日なの♪」
リツが、空に小さな声で囁いた。
「リツ!余計なこと言わなくて良いのっ。」
「真啓ってヤツも一緒ってことか?」
「そう♪華と私、小鳥遊くんと、真啓くんでお勉強会♪」
…リツも夏と満更でも無い感じなのかな?
「お前ら、勉強する気ねーだろ?どうせ喋って終わりじゃね?下らねぇ。勉強なら一人でした方が、絶対効率良いに決まってるじゃん。馬鹿じゃね。」
空は、ふんっと鼻で笑った。
「そうよね…空には、お友達が居ないもんね…そんな楽しさなんて分からないのは、仕方が無いわよね。」
「まぁまぁ…。もし良ければ、空も…?」「駄目っ!!」
リツが、言い終わらないうちに私が拒否した。
「誘ってくれて、嬉しいけど、俺忙しいから、無理だ。」
空は、あたしを完全に無視して、リツに笑った。
…むかつく!!
「そう…じゃあまた今度ね。夏くんも、真啓くんも空に紹介したかったんだけど…。」
リツは、あたしを宥めながらも笑った。
「紹介しなくって良いよ!」
…まったく!
あたしと夏は、一度家へ戻って着替えて、お土産を持ってから、リツとは真啓の家で合流。真啓はピアノのレッスンがあるので、その後にお邪魔する予定だ。
私は、悩んだけど、透け感の少ない、柔らかな印象を与える、袖口がゆったりとした長袖のメロウ・スリーブのシアー・トップスの上に、淡いダーティー・ピンクのキャミ・ワンピ。ベージュのミドル・ヒールの靴を選んだ。
「あら♪素敵じゃない。」
着替えたあたしを見て、ママが褒めてくれた。それから、ダディが、リツとお揃いで買ってくれたブレスレット。
「うん。」
夏は、生成りの緩やかに曲線を描き首元が広く開いた、ヘビーウェイト・ボートネック・シャツにデニム・ブルーのイージー・スキニーパンツにグラディエーターサンダル。カジュアルだけど、すっきりした感じだった。
「晩御飯は、真啓の家で食うから、夕食要らない。」
夏は、ママにハグとキスをしながら言った。
「わかったわ。帰る時には、静さんに電話してね。」
「うん♪分かってる。」
夏は、何度も真啓の家に行ったことがあるらしけど、あたしは初めてで、ちょっと緊張する。
「華?緊張してるの?」
夏が、笑った。
「うん…ちょっと。」
「凄いデカいマンションだよ。俺らの家の2倍は余裕である広さだ。」
「へ~想像つかないや。」
「真啓のお父さんは、かっこよくて面白い人だよ…だから、大丈夫だよ…でも、いつも両親が仕事で忙しいから、殆ど会えない。」
「そっか…。」
真啓の両親が居ないと聞いて、少しほっとした。
ーーー♪
真啓のマンションに入ると、部屋のボタンを押した。
「はい…。」
お手伝いさんが、出た。
「こんばんは。真啓君の友人の、今泉 華と、小鳥遊 夏です。」
「どうぞ、お入りください。」
エントランスの自動ドアが開いた。エレベーターで最上階へと昇る。
確かに、エントランスもゴージャスな感じだ。
エレベーターを降りると、長い通路を歩いた後、気が付いた。
最上階の部屋は、ひとつ。
「凄いね。」
…正直驚いた。
「だろ?」
夏は、あたしが驚くのを見て笑った。
部屋の前迄行くと、待合室のような専用ロビーがあった。
「真啓の本当の父親は、お金持ちだったらしい…だから、伏見姓を名乗ってるけど、兄弟は義父の名字を名乗ってる。」
…知らなかった。
夏が、ドアのチャイムを鳴らした。
すぐに、ドアが開いて、真啓が出てきた。
「夏、華ちゃん、いらっしゃ…い。」
夏は、お邪魔します~と言って、自分の家のように、ずんずんと先に入ってしまった。真啓は、あたしを見て、一瞬言葉に詰まった。
「あ…華ちゃんの私服…初めてみたから。見慣れなくて…。」
真啓は、恥ずかしそうに笑ったので、あたしも恥ずかしくなった。
「とっても、素敵だね。」
真啓は、ゆったりとしたVネック白Tに、ネービーのルーズシルエット・カーディガンを羽織り、ゆったりとしたテーラード・スラックス姿で、とっても恰好良くて似合ってた。
「ありが…とう。伏見君も制服姿しかみたこと無かったから、ちょっと違和感あるよね。お互いが私服って変な感じだね。」
「そうだね。」
なんとなく、お互いを見つめ合っていたけれど、夏に呼ばれてハッとした。
「華~!利津ちゃん着いたって。」
あ…僕、エントランス迄迎えに行ってくるよと、真啓が言った。
「先に、リビングで待ってて?」
真啓が夏に言うと、夏に案内されて、とても広いリビングへと行った。
「すご…い。」
数分後に真啓と、リツが一緒にやってきた。あたしは、お土産を真啓に渡した。
「華ちゃんケーキ作ってくれたの?」
真啓は、ケーキ箱の中ちょっと見て嬉しそうに言った。
「うん♪シフォンケーキ。」
「母の監修入ってるから安全だよ。」
夏が意地悪く笑った。
「酷い~!ママは手伝ってくれただけだもん。」
「華ちゃんが作ってくれたものなら何でも嬉しいよ♪」
真啓が、にっこりと笑ったのを見て、リツが含み笑いをした。
「真啓くんの家って…凄いねぇ。」
リツもあたしと同じように、キョロキョロと見回していた。マンションなのに、部屋の中に階段があって1階と2階に別れていた。
「そうかな…。」
真啓は、恥ずかしそうに笑った。
「さぁ♪じゃあ早速始めよう。」
あたしは、リビングのテーブルに上に荷物を置いて、いそいそと教科書やノートを出し始めた。
「華!」「おい!」
リツと、夏が同時に声を上げた。
「え…何よ?勉強する為に来たんでしょ?」
真啓が、くすくすと笑った。
「華ちゃん…じゃぁ、一緒に僕と勉強しよう。」
真啓は、あたしの隣に座って、ノートや筆記用具を持ってきた。
「利津ちゃんは、ホラー映画好きって言ってたよね?」
「うん。結構観てるかも…夏くんのお勧めある?」
「華も俺も好きだから、いっぱい持ってるよ?今度貸すよ。それとも家に来ても良いけど…。」
リツと夏も、暫く楽しそうにおしゃべりしてたけど、あたし達に混じって、いつの間にか勉強を始めた。
同じ教科書を使ってても、先生が違えば、教え方も違うから、真啓のノートとあたしのノートを交換して、ポイントを確認した。
「伏見君の字…とても綺麗で読みやすいね。」
夏は、面倒くさがって分からないところを聞いても、適当にしか教えてくれないけれど、真啓は、例題なども交えて丁寧に教えてくれるので、分かりやすかった。お互いに教え合う…というより、真啓があたしに教えてくれる方が多かった。
「華ちゃんの字も、可愛らしいくて素敵だね。」
「そうかなぁ…もう少し綺麗に書けるようになりたいんだけど。あたしは、伏見君の字の方が好きだなぁ♪読みやすくて綺麗で…筆跡って性格が出るっていうもんね。」
あたしも、夏も習字を習ってたけど、真啓の字の方が綺麗で読みやすい。
気が付けば、あたし達を見て、リツと夏がくすくす笑っていた。
「何よ?」
リツも夏も、あたしを時々からかうので、身構えた。
「仲が、良くてお似合いだなぁ~と思って。」
「ちょ…。伏見君に失礼だよ。」
あたしは、顔が真っ赤になるのを感じた。
「リツちゃんも、夏もからかうのは、やめてよ。」
真啓も、恥ずかしそうに笑った。
「そうだ♪みんなで写真撮ろうよ!」
リツが、パタンと教科書を閉じて、突然言い出した。
「なによ…突然」
「良いじゃない♪お勉強会記念。」
リツ、あたし、真啓、夏の並びで写真を撮ろうとした瞬間、リツと夏が両サイドから、思いっきり押してきて、真啓とぴったりとくっつく形になった。
「ちょ…!!」「あっ…。」
あたしと真啓は、声をあげた。
「はい♪チーズ!」
写真を撮ると、夏もリツも、パッと離れ再び席に戻った。
「真啓、後で写真送る。」
夏が、ゲラゲラと笑った。
「ふたりとも、ちょっと強引すぎるよ…。」
真啓は、真っ赤な顔をしながらも、ちょっと嬉しそうだった。
お手伝いさんが、夕食を作ってくれた。
真啓の双子の妹、怜、6歳違いの弟怜久も一緒にご飯を食べた。怜は、色白で、可愛いというより背が高くて美人だった。怜久も、目が大きくて、どことなく真啓に似てた。
みんなで、わいわい楽しくご飯を食べて、あっという間に時間が過ぎてしまった。夕飯の後に、わたしとママが作ったケーキをみんなで食べて、夏がダディに電話を掛けた。
「華ちゃん、リツちゃん、またいつでも遊びに来てね。」
「うん。伏見君、勉強教えてくれてありがとう。」「みんなのノート書き写しちゃった♪マジで助かった。」
あたしとリツは、お礼を言って真啓の家を出た。真啓は、マンションの下まで見送りに来てくれた。リツは、ダディが家まで送り届ける予定になってたので、夏と一緒に長く居られると嬉しそうだった。
「ねえ…華ちゃん。夏が居ない時にも良いから、いつでも遊びに来てね。」
「うん♪伏見君も、うちに遊びに来て?毎回テストの前に一緒に勉強できると良いんだけど…でも、ピアノのレッスンで忙しいものね?都合の良い時あったら、教えてね?」
「もちろんだよ♪」
ダディが、車で迎えに来ると、真啓にお礼を言って車へと皆で乗り込んだ。
振り返ると、真啓は角を曲がるまであたし達の車を見送ってくれてた。
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