お茶会のお菓子は

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その日の会合はいつもの広場の時計台ではなく、町外れの古い牧場だったのだ。 お昼過ぎ、少し早めに家を出たのだけど、廃墟になったそこへは今まで行ったコトがなかったので、道に迷ってしまった。 空中で帽子を片手に私は短い髪をかきむしった。 「まずい!」 ――いや、本当に もう夕暮れ時、あせる私が山ほどの高さまで舞い上がって箒の上からそれらしい建物を見定めていると、上から声がした。 「今から行くところかな?」 ――助かった こころの中の大感謝な気持ちが声にのって弾んでしまう。 遅刻は免れそう。 「はいっ! 先輩」 ふわりと同じ高さへ降りてきたのは私よりすこし年上の魔女。 耳を隠す髪はカラスのように黒く、大きな胸元まで流れている。 大きな目、長いまつ毛、濡れたように赤い唇のすぐ下には星型のほくろが見えている。とんがり帽子につけた羽根飾りは私と同じ瑠璃色、きっと大師匠はおんなじだ。 安堵あふれる私はきっと最高の笑顔だったと思う。 そんなスペシャル笑顔でご挨拶。 「えーーと。マルンと言います。先輩、初めまして」 「こちらこそ」 うん、さすが先輩。優雅な所作でうなづく……時に箒のバランスがちょっとくずれてふらついた。 一抹の不安がよぎるが、それは打ち消して、私は笑顔を強化する。 しばしの沈黙。笑顔は固まったままに。 風もないのに、先輩だけゆらゆら揺れている。 風が吹いたら、先輩だけ大きく揺れている。 そして、顔を見合わせて、微笑みあって、二人の言葉が交差した。 「「助かった」」 ――えっ!?
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