救い

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「わかりました」 ゆかりは一文字との経緯をぽつりぽつりと話した。 そして教団の洗礼と称して毎日慰み者なった事、 二人においては儀式と称して体を吊るされたり、 縛られたり特殊な嗜好の相手をさせられ腰椎、 頚椎を痛め骨折までした事を明かした。 「気の毒に…」 「はい…」 「さて、これからどうします?日本に帰って 一文字に追われる毎日は嫌ですよね」 「はい」 ゆかりはうつむいた。 「福島の忍者パーク、忍者学校で働きませんか?」 「場所は東京から離れた福島だし、 イザとなったら忍者が護ってくれます」 「えっ、護ってくれる?」 「それは冗談ですが、彼らはかなり強いですよ。 そこは海外からかなりの忍者学校の生徒が 集まる予定ですから、語学に長けたあなたが適任かなと思いまして」 「えっ、いいんですか?」 「聞いたところによると学校の成績も良いし、 スキルを生かせるかと思います」 「はっ、はい」 「SNSの発信に関しては別に給料払います」 「考えさせてください」 「ダメですか?」 「いいえ、誘っていただけるの嬉しいのですが、 一時は敵対していた一文字の元に居た私のような者に」 「それは大丈夫です、一恵さんに聞きました。 あなたは一文字を恨んでいると」 「はい」 「一恵さんも玲奈さんも一文字を恨んでいます。 それが共通認識ならいいじゃないですか? 実際一文字は悪い奴なんですから懲らしめましょう」 「はい!私も協力します」 ゆかりに笑顔が戻った。 「ではお世話になります」 「それでは、履歴書を書いてください。雇用契約書も作ります。 後は一恵さんとやり取りしてください」 「はい」 ゆかりは亮が部屋を出ていくまで頭を下げていた。 「それから、当局から教団であなたが見聞きした事は 他言無用と言われていますのでよろしくお願いします」 「はい承知しております」 〜〜〜〜〜〜〜 「亮。予定通りで良いのね。 別荘に泊まれるのね」 美咲から電話かかかってきた。 「はい、準備してあります」 「先日、NER教団に家宅捜査が入ったので、 関連して一文字の捜査依頼がFBIから来ると思います」 「わかったけど、何故亮が知っているの?」 「ジェ、ジェニファーから聞きました」 亮は慌てて誤魔化した。 「ハワイで会うの楽しみにしているわ」 「そうですね、でもかなり人がごちゃごちゃしているので ご承知ください」 「はい」 〜〜〜〜〜〜〜 「社長、そろそろ用意をしませんと」 一恵が連絡をしてきた。 ニューヨークジョン・F・ケネディ空港から ホノルル空港までの飛行時間約11時間10時に 出発して到着は21時、時差はマイナス6時間で 到着は現地時間15時になる。 「一恵さん用意って?」 「亮さんの服ですよ。ハワイでスーツで革靴はないですよね」 「確かにユニクロで良いですよ」 「そうは行きません!」 「ではスタジオDの製品は?」 「まだ、メンズカジュアルは企画中だそうです」 「そうですか、ではハワイで買いましょう」 世話やきの一恵の態度が愛しかった。 一恵のなるがままに買い物して行くと一恵は 時々ブランドの婦人服を羨ましそうに見ていた。 「一恵さんも買ってください。経費で落とせますから」 「えっ、そうは行きません。 中村さん叱られます」 「では、僕がプレゼントします」 「それもいけません」 一恵が必死に断ると 「好意を受けるのも、礼儀ですよ」 「はい、わかりました」 亮は自分のブランドに関する知識を使って 自分の事などそっちのけで一恵の洋服選びを始めた。 「僕はこっちの方が好きみたいだ」 「すみません、かなり高いのですが…」 「大丈夫です。僕は結構お金持ちなんです」 亮は忙しすぎて自分の為に買い物でお金を 使う事あまり無くお金が貯まる一方だった。 「ありがとうございます」 亮の収入と言えばナチュラルグリル、D&R、 アメリカンウェブの上場益及び役員手当、 日本に置いても同様各会社からの役員報酬、 特許料、株の不労所得、アメリカと日本両国の 収入を合わせると飛んでもない 金額になっていた。 そこにロイから連絡があった。 「亮今どこだ?」 「メイシーズで買い物しています」 メイシーズとはヘラルド・スクエアにある 巨大ブランドが入ったショッピングモールである。 「今から会えるか?頼まれていたフロリダの件だ」 「わかりました。どうしますか?」 「今からそっちへ出向く」 「お願いします」
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