第二章 悪の街

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「ちょっと待ってください」 カジュアルな装いに、紙袋を2つ持った 女性が声を掛けてきた。 「私喜多ひろみと申します。 私にも名刺をいただけませんか?」 「先ほど向かい側に座っていた方ですね。  見ていらっしゃったんですか」 「はい」 「どうしたんですか?」 「私大学4年生で就活中なんですけど、 なかなか決まらなくて  女性に名刺を渡している所を見てしまったんです」 「そうですか…お役に立つかどうか」 亮は名刺を渡した。 「社長さんなんですね」 ひろみは飛び上がって喜んだ。 「今から何処へ行かれるんですか?」 「友人と飲みに行きます」 亮は部下と飲みに行くと言うと偉そうに見えるので そう言った。 「私も…」 ひろみはそう言って亮の後を付いて行って 自分の話をした。 ひろみと言う女性、身長が160cmくらい 就活中の女子大生らしく後ろで黒髪を結び 中々の美人で大きめの胸で スタイルが良い。大学は吉祥寺のレベルの 高い女子大、就職試験に落ちたのは大手商社や アナウンサーになろうと高望みをしていたからだった。 ひろみは新宿東口交番に付いてきて 二木と三雲と会った。 「こんばんは、喜多です」 ひろみは二人に愛想良く挨拶をした。 「二木です」 「三雲です」 「さて行こうか」 亮が言うと喜多が寂しそうにしていた。 「社長、可愛そうじゃないですか」 「電車降りたら勝手について来たんだよ」 「良いじゃないですか。飲む前に焼肉食べたいし」 二木が気を使っていた。 「しょうがないなあ、彼女が一緒なら  社長は止めてください」 「了解です」 三雲がニコニコ笑った。 「喜多さん、食事は?」 亮は後ろを振り返って言った。 「はい、まだです」 「一緒に行きましょう」 「本当ですか、行きます」 ひろみは走って来た。 「二木さん、焼き肉を食べたら  ラブポーションに行きますよ」 「キャバクラですか?」 「ええ、しばらく顔を出していなかったので  遊んでいきましょう」 「はい、喜んで」 焼肉屋は歌舞伎町にある飯田の店だった。 「ここは飯田さんのお店です。 好きなだけ食べてください」 「飯田さんの店なんですか?」 二木が繁盛している店内を眺めた。 「銀遊亭は新宿に無いので、ここも  美味しいですよ」 「焼肉イイダ苑は有名ですよ」 四人で焼き肉を食べていると 三雲はひろみと話をしていた。 ひろみがいるせいで、これからの話 が出来なくて世間話しかできなかった。 「團さんは何のお仕事なさっているんですか?」 「コンサルティングと賃貸業をやっています」 「コンサルティングか」 ひろみは就活に関係すると思っていたが 自分に関係が無いのでがっかりした。 「二木さんと三雲さんは?」 「俺たちはセキュリティの仕事です。  ネットセキュリティとかビルのセキュリティとか」 「セキュリティかっこいいですね。場所はどこですか?」 「大崎です」 「大崎は今大きな会社が有りますよね」 「はい、良く知っていますね」 「就活で調べていますから」 「なるほど…就活か頑張って下さい」 「ありがとうございます」 ひろみは二木と三雲の頭を下げた。 「團さん、どこかにコネクションありませんか?」 ひろみは就活に疲れていた。 「くれぐれも就活で怪しい人と付き合ってはいけませんよ」 「えっ、怪しい人ですか?」 「就職を紹介すると言って体を求めて来る輩  が居ますからね」 DUN製薬の元同僚大原智子 は就活の時に五島商事の内村に会って不幸な目に会っていた。 「分かりました。相談相手を選びます」 「では」 亮は店員を呼びチェックをした。 「團様、お支払いは結構です。オーナーが言っておりました」 「ありがとうございます」 四人は外に出て三人はひろみと別れた。
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