禁足の山

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 我々の住む村の側にある小高い山。そこには昔から恐ろしい神が棲むとされていた。 「そんな大昔のおとぎ話、まだ信じてるの?」  まだ蝉がかしかましく鳴くある日。僕がふと話題にしたことに、クラスメイトの花岡美嘉が小馬鹿にするように言い放った。 「だって」 「今時、おじいちゃんおばあちゃんも信じてないわよ」  言い募ろうとする僕を制して、美嘉はそう断言する。話の成り行きを伺っていたクラスメイトたちも、うんうんと頷き 「久々に聞いたな」 「小さい頃は脅かされたよね。特にお盆の前後は近づくなって」 「そうだっけ?八月の終わりじゃなかった?」  そう口々に言い始める。  みんな、知ってはいるのだ。それが本当かどうかは別として。  小高い山には恐ろしい神が棲む。  たったそれだけの伝承なのに……
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