禁足の山

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 それからしばらく、クラスでは昔話が話題となった。みんな何らかの情報は持っているもので、ああでもない、こうでもないと言い合う。  そしてそれだけ、昔話だ、神なんて伝承だと言いながらも 「じゃあ、その山に入ってみよう」  とか 「夜は確実に会えるらしい。肝試ししてみよう」  とは言わないのだ。  頭では、口では否定している。でも、実行に移すことは何故かできない。  村の側にある、禁足の山。  僕はその様子に小さくほくそ笑む。  それを、美嘉が不思議そうに見るから 「いや。僕の知らないこともいっぱいあったなって思って」  慌てて取り繕い、席を立った。 「変な奴」  美嘉がむすっとすると 「ってか、誰?あいつ」  ずっと横の席で聞き役に徹していた、水野悟史が訊ねた。
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