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「……いや、それは、その……」
そう、目を逸らしたどたどしく呟く陽真さん。いや、なんでそんな挙動不審なの? 何も悪いことしてないでしょ。いや、あの告白が社会的にどう捉えられるかは分からないけど……少なくとも、私に対しては何も悪いことしてないでしょ。
ともあれ、結局どういうことかというと――彼は事実そのものではなく、認識を変えようとした。証拠の画像もあることだし、事実を――彼が私のもとに通っていた事実自体をごまかすのは、相当に至難の業だろうし。
だから、認識の方を変えた。成人男性とただならぬ関係を持つ、いかがわしい女子生徒――周囲から見れば随分とマイナスであろうそんな認識を、成人男性と年齢の差を越えて真剣に交際をしている一途な生徒という認識へと変えた。尤も、それでプラスに捉えてもらえるかどうかは懐疑的なものの……それでも、幾分はマシであろう認識へと変えてくれた。
そして、それは一定の効果を見た。もちろん、校長としては全くのデマである方が良かったのは疑う余地もないけど……それでも、学校にとっていわゆる問題児と認識されるような生徒を抱えるリスクに比べれば、それが事実かどうかはともかく真剣交際ということにしておいた方が幾分都合が良かったのだろう。真剣交際なら、もしもこの情報が外部に洩れたところで、当校のイメージを損なう可能性はそれほど高くはないだろうし……たぶん。
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