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――――昔から、私は一人だった。
『……ただいま』
鍵を開け、扉を開けそう伝えるも、返事は一向に届かない。今は、たまたま誰もいないから――ではなく、これが通常。自分の家のはずなのに、自分以外のただいまを聞いた記憶がなく、おかえりに至ってはもはや誰の声も聞いた記憶がない。自分の家のはずなのに、誰に迎えられることも、誰を迎えることもない。
だけど、不幸じゃない。虐待を受けてたわけでもないし、ご飯もおいてくれてたし。まあ、小学校の高学年くらいからは作っておいてはくれなくなったから、冷蔵庫にある材料で自分で作るようになってたけど。
ともあれ――私より辛い境遇の人なんて星の数ほどいるはずだし、私は不幸なんかじゃない。なのに……それでも、寂しかった。
――だから、私は求めた。あんなにも端なく、脅迫すら厭わない非道さで以て求めた。私の傍にいて、他愛もない日常を共に過ごしてくれる誰かを。そして、ついにあの人――陽真さんに出会った。
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