いつ言ってくれるの?

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「でも、馬鹿だよね陽真(ようま)さん。あんなこと言っちゃったら、実は違いましたなんて判明した後が大変だよ?」   「……まあ、その時はその時だよ」  そう言うと、仄かに微笑み答える陽真さん。間違いなく、自分でも分かっているだろうけど……あれは、彼にとって呪いの言葉だ。あんなことを言っちゃったら、実はそうじゃない――真剣交際じゃないと判明した後、非難を受けるのは恐らく彼の方。一方、私は不誠実な大人に弄ばれた哀れな子どもといった認識となるだろう。  ……まあ、それも含めての発言だったんだろうけど。いざとなったら、全ての罪を自分が引き受けるつもりでの発言だったんだろうけど。……全く、とんだお人好しだよ。分かってるよね? 私は、貴方を脅迫した人間なんだよ? でも……そういう貴方だから、私は―― 「……っ!!」  「……どうかした? 里李(さとり)さん」 「……あ、ううん、何にも……」  私の異変を察したのだろう、心配そうに尋ねる陽真さん。具体的には……うん、鏡なんて見ずとも顔が火照っているのが分かって。  ……もしかして、本気? 本気で、私と、その……いや、流石にないか。我ながら、思い上がりも甚だしい。  ……まあ、それはそれとして―― 「……ところで、陽真さん。さっきは……いや、これまでもずっとスルーしてあげてたけど、いつ言ってくれるの?」 「……あ、いや……うん」  ふと、そんな問いを掛ける。まあ、半分くらいはからかってる部分もあるんだけど……でも、もう半分は本気で。滑稽だと、馬鹿みたいだと思うけど……それでも、言ってほしくて。束の間でも良い、ここが誰かの……私の居場所だと思える証がほしいから。だから――  すると、やはり困惑した様子ながらも意を決したように私の目を見つめる陽真さん。そして―― 「……うん、ただいま。里李さん」 「……うん! おかえり、陽真さん」
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