……いや、止そう

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「…………へっ?」  卒然、後方から届く馴染みのない声。いや、馴染みどころか、恐らくは聞いたこともない声で。……えっと、僕のこと? そんな疑問を抱えつつ振り向くと、そこには―― 「――初めまして、お兄さん。私は此島(このしま)里李(さとり)。お兄さんは?」 「……えっと、降崎(ふるさき)陽真(ようま)、です……」  そう、にこっと微笑み自己紹介をする少女。そして、その姿は初めてでなく――まさしく、つい先ほど公園のベンチで眠っていた清麗な少女で。……だけど、いったいどうし―― 「……っ!!」 「うん、いい反応だねっ」  刹那、呼吸が止まる。何故なら……何処か悠然とした笑みを湛える少女が、僕の眼前に差し出したのはスマホ――正確には、先ほどの一部始終がバッチリ収められた動画で。……えっと、どういうこと? と言うか、いつの間に? だって、彼女は眠っていて――  ……いや、止そう。この期に及んで……いや、どの期に及んでも、分からない振りなんてしても仕方がない。つまりは―― 「――これから宜しくね、陽真さん?」  そう、花のような笑顔で告げる少女。そう、つまりは――僕は、無様にも嵌められたわけで。  
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