少女の部屋で

1/7
前へ
/23ページ
次へ

少女の部屋で

「…………はぁ」  それから、数日経た平日の夕さり頃。  思わず、溜め息が零れる。そんな鬱々とした僕の視線の先には、二階建ての木造アパート――数日前に出会った例の少女、此島(このしま)里李(さとり)が一人で住んでいるらしいアパートで。 【――明日の仕事が終わったら、私の部屋に来て? 場所は――】  これが、昨日の夜届いたメール。そして、ここに記されていた住所をもとに、このアパートに辿り着いたわけで。……うん、わりと近くて良かった。まあ、そもそも帰り道の公園で会ったわけだし、近くである可能性が高いか。  ……いや、別に良くはないけども。そもそも、この状況自体がまるで良くない。……いったい、何を要求されるの……まあ、お金だろうね。と言うか、見ず知らずの僕に対し他に要求するものがあるとも思えないし。  ……うん、沈んでいても仕方がない。今日、僕に出来ることは彼女の求める額を差し出し、もうこれで終わりにしてほしいと説と……いや、懇願することだけ。土下座をしても構わない。とにかく、どうにか今日で――  そんな何とも情けない覚悟を決め、少し軋む階段を上がり二階へ。そして、少し歩を進め奥から二番目――かのメールに記載されていた、少女が住んでいるらしい部屋の前に立つ。そして、震える指でインターホンを鳴らし―― 「――あ、おかえり陽真(ようま)さん!」 「…………へっ?」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加