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少女の部屋で
「…………はぁ」
それから、数日経た平日の夕さり頃。
思わず、溜め息が零れる。そんな鬱々とした僕の視線の先には、二階建ての木造アパート――数日前に出会った例の少女、此島里李が一人で住んでいるらしいアパートで。
【――明日の仕事が終わったら、私の部屋に来て? 場所は――】
これが、昨日の夜届いたメール。そして、ここに記されていた住所をもとに、このアパートに辿り着いたわけで。……うん、わりと近くて良かった。まあ、そもそも帰り道の公園で会ったわけだし、近くである可能性が高いか。
……いや、別に良くはないけども。そもそも、この状況自体がまるで良くない。……いったい、何を要求されるの……まあ、お金だろうね。と言うか、見ず知らずの僕に対し他に要求するものがあるとも思えないし。
……うん、沈んでいても仕方がない。今日、僕に出来ることは彼女の求める額を差し出し、もうこれで終わりにしてほしいと説と……いや、懇願することだけ。土下座をしても構わない。とにかく、どうにか今日で――
そんな何とも情けない覚悟を決め、少し軋む階段を上がり二階へ。そして、少し歩を進め奥から二番目――かのメールに記載されていた、少女が住んでいるらしい部屋の前に立つ。そして、震える指でインターホンを鳴らし――
「――あ、おかえり陽真さん!」
「…………へっ?」
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