帰るばしょ。

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飲酒運転の車に轢かれて、マヒロは右の腓骨(ひこつ)にヒビが入って、私は頭を地面に打ったらしい。その上、2人して高熱を出して、丸2日も目を覚まさなかったらしく、両親と祖母は生きた心地がしなかったと言っていた。 …おじいちゃんは、 3年前にもう亡くなっている。 「夢を、見たの。」 早く言わないと、夢が砂のように私の中から零れてしまう。確かにおじいちゃんが、夢にいたの。私は両親と祖母に全てを説明した。 「9歳の私が7歳のマヒロをおんぶして、広島の家に帰ろうとしたんだけど、おじいちゃんが『帰れ!!』って言って、家に全然入れてくれなくて…、」 私の話に困惑する両親と祖母。 そして、マヒロが一番驚いていた。 「私も同じ夢見た…!私、夢の中で凄く足が痛くて、だからチヒロにおんぶしてってせがんだの。それで家についたら、おじいちゃんに『帰れ』って怒られて…」 言いながら、マヒロの視線が両親、祖母、そして私へと移る。私とマヒロ、全く同じ夢をみてたってこと…? そういえば、夢の中の身体の症状が、現実での怪我とリンクしてる。夢で足が痛いと言っていたマヒロは足を骨折しているし、夢で頭がクラクラしていた私は、頭を強打していた。
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