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『いい気味ね。もっと他にもやってやろうじゃない』
村の中心部へ進んでゆく女神の青い瞳が捉えたのは、大きなブロッコリーのような形をした木の下でぴたりと寄り添う男女の姿。
『ふん! またシンセーヌ様の力で二人を引き裂いてやるわ』
女神は再びツマミを捻る。
「あいじでいるば」
「ああ、ジュリアーヌ、その声どうしたんだい?」
男が心配そうに女を覗き込む。
「ばがらないば。ぎゅうにごんなごえに……」
『ふふふふふっ。いい感じね』
女神はFoldと書かれたツマミを更に捻る。
「ゴボボボ!」
女が放つのは悪魔のような声だ。
「大丈夫かい?」
男は女を優しく抱きしめる。
「ゴボボボ!」
「たとえこの先君の声が戻らなくても、僕の愛は変わらないよ」
「ゴボボ……」
『きいいっ! なんかムカつくわね。こうなったらこの世の音を全てメチャクチャにしてやるわ!』
女神はそう言うとふわりと上空に舞い上がった。
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