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『人間共よ、音の女神シンセーヌ様の機嫌を損ねるとどうなるか思い知らせてやるわ!』
女神が空中に手をかざすと、沢山のケーブルに繋がれた装置とノートパソコンが出現する。
パソコン画面の上部には音の波形を表すオシロスコープ、下にはスペクトルアナライザーが表示されている。
『ふふふっ、この世界の音は全て私の思いのまま。
このシンセを使えば世界中の音は私の好きなように変化させることができるのよ』
どこからか風に乗って笛の音が聞こえてくる。
その音色は新緑を渡ってくる空気のように澄んでいて、村人達の心を洗い流してゆく。
『ちょうどいいわ。何かムカつくからこの綺麗な笛の音をグチャグチャにしてやるわ』
そう言うと女神はシンセのツマミを捻った。
先程まで心地よく耳に響いていたその音は、次第にカエルを踏み潰したような濁った音に変化してゆく。
オシロスコープに表示される波形も綺麗な三角の山が連なった三角波ではなく、倍音を多く含んだギザギザしたものだ。
『波形を折り畳んだり、倍音を削ったり。どんな綺麗な音だって私にかかればこの通り』
「うわぁ、何だこの音は、うるさくって仕方がない!」
「誰かこの騒音、止めてくれ。仕事が捗らないじゃないか!」
口々に苦情を訴える村人達に、女神は嬉しそうな笑顔をみせる。
『きゃははっ。いい感じ。次のターゲットはコイツね』
女神が入力する音を変えると、パソコンに表示される山の形も変化する。
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