女神の音楽

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 キィーン、キィーンと金属同士が力強くぶつかり合う音が城内に響きわたる。  金属の鎧を身につけた屈強な男達が剣を合わせている。  どうやら戦に向けての鍛錬のようだ。  女神は迷うことなくシンセのツマミを捻った。  一際大きな体をした赤毛の男性が長い剣を相手に向けて振り下ろした。  相手をしているのは細身の若い男性だ。  彼は怯むことなく大男の剣を自身のそれで受け止める。  ピロローン。  脱力するようなその音に、彼は大男の剣を顔面で受けそうになってから慌てて身をよじる。 「おいおい、『ピロローン』って何だよ。思わず顔面で受けちゃうとこだったじゃないか。訓練だって真剣にやってもらわなくちゃ」 「それはこっちのセリフだ。お前の剣がおかしいんだろう」    大男は凄んでみせる。 「何だと!」  細身の男は果敢に大男に掴みかかった。 「やるのか!」  大男も剣を捨て細身の男の鎧に手をかける。 「おい! 訓練中に何やってるんだ!」  隊長だろうか、見事な細工を施した鎧に身を包んだ男性が二人に駆け寄ってくる。  隊長の籠手が大男の鎧に当たると再び「ピロローン」と小さな音が鳴る。 「だから『ピロローン』って何なんですか! 真面目にやってくださいよ!」  細身の男は結構気が強いらしい。隊長相手にも突っかかっていく。 「お前、隊長に向かって何て口を利いてんだ!」  男達の鎧が激しく当たる度、「ピロローン」という音が響き渡る。 「だから真面目にやってくださいって!」 「うっせーな!」 『あらら。部隊が暴徒と化せば村は全滅、かと思ったんだけど……。何だか内輪揉めになっちゃったわね。まあいいわ。部隊がこれじゃ、そのうち他の種族に滅ぼされるでしょう』  女神は更にツマミを捻ると、「ポロローン」だとか「ペロローン」という呑気な音と共にあちこちで団子状の小競り合いが繰り広げられてゆく。
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