ベランダの上で。

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『お前もう、俺の部屋来るの禁止』 あの時隔てた壁は、一体どれくらい分厚くなってるの? あの頃より、少しは薄くなってるの? ねえ。私は運動音痴だから、さっきみたいにバランスを崩して体当たりしちゃうかもしれない。でも、それでもその壁を、飛び越えてしまいたいんだよ。 ねえ。そうしたら颯ちゃんは、受け止めてくれる? 「……私、颯ちゃんが」 「ゆず。」 「え」 「…誕生日、おめでとう」 「っ…」 悔しい。私の気持ちなんてとっくに気付いてるくせに。いつもそうやってはぐらかして、本当の気持ちを教えてくれない。 それなのに。今日だけ、の理由を覚えていてくれたことが、嬉しくてたまらない。悔しいけど私は、どうしたってあなたを、嫌いにはなれないんだ。 「ふ、涙目」 「…颯ちゃんなんか嫌い」 「……まじか」 ねえ、颯ちゃん。私これだけは知ってるの。あなたは私に、幼馴染のゆずでいてほしいの。 ---『ゆずが、ゆずであるから』 "知らないヒト"のゆずなんて、ゆずじゃなくなってしまうんだよね。 「なんか欲しいもの、ある?」 でもね、それでも私は、あなたを想わずにはいられないんだよ。 「…颯ちゃんがほしい」 「っ」 「それしか、いらない」 …ほら。また、困った顔をさせてしまった。 「…俺にとって、ゆず以上はいないよ」 「っ、じゃあ」 「でも、彼女とか恋愛とか、そういう言葉でこの関係を狂わせるのは、……怖い」
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