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バスは下山して麓の温泉施設に寄る。温泉で疲れを流し、俺と菜実は昼食バイキングの料理を挟んで向かい合っていた。
「菜実は何をお願いしたのさ」
ご来光を拝んで一緒に願掛けしようと話していたのを思い出し、そう尋ねた。
「次は頂上に行けますようにってお願いした」
「それはいいね」
スタッフに頼んでいた生卵が来たので、菜実のワカメラーメンにいれてやる。ほら、ご来光ラーメンだ。
「あなたは?」
「富士山の頂上で、カレー屋をオープンできますようにって」
「本当? それいいなあ」
「カレー屋やってもいいの?」
あはは、と菜実は笑ってごまかす。
そうだな、また来年富士山にチャレンジするのもいいかもしれない。そして今度こそ頂上で並んでお願いしよう。
カレーショップをふたりで成功させる。そんな長くてやりがいのある道を、またゆっくり登り始められますように。
そして、頂上にふたりそろってたどり着けますようにと。
多分、その時こそ本当にご来光が俺たちを祝福してくれるはずだ。
それもいいかもな。
「ご来光ラーメン、おいしい」と目を細める菜実を見てそう思ったのだった。
(終)
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