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「あの木……いや、これだったか?アサルトベアが木登りをしていてな、俺が撃ち落としてやったんだ。この弓じゃないぞ?もっと小ぶりの、おもちゃみたいな弓で、背中をぐさりだ。たしか……5年前だったな」
心臓がバクバクと脈打った。
あの日握りしめた指のように、スゥッと指先が冷たくなっていく。
「覚えているだろう?お前の慌てようといったら、今になれば面白いものだ」
「……あのあとお父上に言いつけて、あなたが怒られてましたけどね」
「ハハハ。いい思い出だなあ」
……いい思い出か。
そうか、コイツらにはいい思い出なのか。
アサルトベアを駆除してやったと、武勇伝にしているのか。
あの時こんな事があってなと、面白おかしく場を盛り上げるだけの、小話でしかないのか。
「ん?なんだ、その目つきは」
ソイツは、僕の目つきに文句があるようだった。
あまりにも傲慢な態度に、僕のかじかんだ指がブルブルと震えた。
全身が震え、これまでに感じたことのない早鐘を打っている。
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