木こりの復讐

13/15
前へ
/15ページ
次へ
怒り、なんてものじゃない。 骨の髄から、憎しみが染み出して……今にも飛びかかろうかとした瞬間だった。 ガサガサ――。 背後から、草を踏みしめる音がした。 そして、眼前の仇敵から生気が消えていった。 隣の護衛の顔からも、色が失われていく。 僕よりも後ろに目を向けて、表情というものを忘れたような面持ちだった。 ドドドッ――。 地面からの振動が、全身を揺らす。 けたたましい雑音が、明確な足音になり、ようやく僕は振り返った。 唾液を飛ばしながら、血走った目で駆けてくるそれに、僕は目を奪われた。 分厚く広く獰猛な体躯、身体からあふれる死の匂い、鼻息荒く、僕たちに飛び掛かろうとする脅威。 「ア、アサルトベア……」 彼の声は震えていた。 アサルトベアを倒した男の、か細い悲鳴に内心ほくそ笑んだ。 ガァァァァァッ! 唸りを上げて、僕たち目掛けて走ってくる。 「お、おい!案内人!なんとかしろ!」 僕はくるりと反転し、彼の顔をまじまじと見つめた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加