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怒り、なんてものじゃない。
骨の髄から、憎しみが染み出して……今にも飛びかかろうかとした瞬間だった。
ガサガサ――。
背後から、草を踏みしめる音がした。
そして、眼前の仇敵から生気が消えていった。
隣の護衛の顔からも、色が失われていく。
僕よりも後ろに目を向けて、表情というものを忘れたような面持ちだった。
ドドドッ――。
地面からの振動が、全身を揺らす。
けたたましい雑音が、明確な足音になり、ようやく僕は振り返った。
唾液を飛ばしながら、血走った目で駆けてくるそれに、僕は目を奪われた。
分厚く広く獰猛な体躯、身体からあふれる死の匂い、鼻息荒く、僕たちに飛び掛かろうとする脅威。
「ア、アサルトベア……」
彼の声は震えていた。
アサルトベアを倒した男の、か細い悲鳴に内心ほくそ笑んだ。
ガァァァァァッ!
唸りを上げて、僕たち目掛けて走ってくる。
「お、おい!案内人!なんとかしろ!」
僕はくるりと反転し、彼の顔をまじまじと見つめた。
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