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きっとこれが最後になるから。
彼の視線は右往左往して、役に立ちそうもない僕よりも、その奥のアサルトベアに向けられた。
そして、隣では護衛らしく剣を抜くけれど、あまりにもくすんで見える。
そんなんじゃ、あれは倒せない。
僕はポッケの奥に指を這わせ、おばさんからもらった聖水を取り出した。
そして、彼らに見せつけるように、コルクを抜いて頭からかぶった。
「な!?そ、それは聖水だろう、俺たちの分は」
あるわけないだろう。
ドドドッ――。
迫りくる振動は凄まじく、僕の脳みそまで揺らすほどだった。
そして、ダンッと大きく揺れたと思えば、空が陰る。
あんぐりと口を開けて尻餅をつく少年と、震えながら剣を握りしめる、護衛のおじさん。
ふたりとも空を見て、ただ呆然としていた。
かつての僕のように。
「た、だすげでぐれっ!」
「ぅわぁぁぁぁあっ!」
僕は、踵を返して林を歩いた。
大丈夫、僕はこの林をよく知ってるんだ。
ここからでも、おじさんたちの家に帰れる。
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