近くて遠い

　なぜワンピースにしてしまったのだろうと悔やんだとしても、もう遅い。もう歩き始めてしまったのだから。
「駅近」の寺だからと、甘く見ていた。鞍馬山は甘っちょろい観光スポットなどではない。正真正銘の修験道なのだった。舗装された手すりつきの階段もあるし、なんだったらケーブルカーが頂上近くまで運んでくれるのだけど。
　先生はケーブルカーを使わない、自力参拝コースを選んだ。途中階段つき手すりつき、よきところで休憩用のベンチつきという、至れり尽くせりの参道ではあるが、そこはやはり山道というもの。歩き続けるとさすがに息が上がってしまった。
　途中で、きれいな女の人とすれ違った。デコルテを開いたトップスに、ひざ上のスカート、足元は光沢のあるハイヒール。きっと、私と同じ考えだったのだろう。寺社参拝とて、街遊びの延長に過ぎない。とてもすてきな女の子になって、とてもすてきな男の人と単純にデートを楽しむつもりで来たのだ、きっと。コースもきっと同じなのだろう。鞍馬寺、そしてそのあと貴船神社。目的はもちろん、縁結び。
　きれいな女の人、ヒールを履く足どりも軽い。それなのに、男の人に手を引かれている。