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プロローグ
月光に照らされた男女が二人。二人はきつく手を結び合って静かに湖に映し出されたもう一つの月を見ていた。月には今にも暗雲が立ち込めようとしている。草原に心地よい風が吹く。
「私達はどれだけ歩いたら巡り会えるだろう。」
「分からんが、我らなら大丈夫。」
男は女と向き合ってもう片方の手を差し出す。
「これは形式的なものに過ぎないが、合言葉を決めておこう。」
女は手を握り返して両手を繋ぐ。
「それはいいわね。」
二人は目を合わせる。時間が、空間が、意味をなさないほどにとけて混沌としてゆく。二人は魂となってそれぞれの所へと飛んでいった。
「はっ!」
何やら不思議な夢を見ていたような気がするけど思い出せない。老人は上体を起こして考えた。
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