第一章第二の世界とピーチファミリー

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第一章第二の世界とピーチファミリー

 〇〇連邦と✕✕共和国の戦争は激化する一方、少数民族ガダ族の大量虐殺は国連からも強い非難の声が寄せられています。次のニュースです── 。 「最近何かと物騒だねえ、母さん。」 彼は自宅のリビングで横になってテレビを見ていた。 「そうねえ。」  母の雉子が答える。 「桃郎もこういうニュースは他人事として聞いたらだめだぞ。」  父の猿彦が言う。 「はーい。」  彼は面倒くさそうに答えた。ふと足元に目をやると、借りていたDVD があった。そういえば今日までだったな。 「ちょっと出かけてくる。」  桃郎は身支度を整えて出ていった。 「いってらっしゃーい。」  出る前に大学一年生の犬美が言った。  帰り道、桃郎は何故か寄り道したくなった。道をそれ、薄暗い路地裏へと入っていった。正面は行き止まりだったが、奥に何か、本のようなものが落ちているのが見えた。桃郎は恐る恐る近づく。  カラスが屋根の上に止まってそれを見ていた。  あったのは埃まみれの古びた本。彼は手にとって埃を払った。表紙にも裏にも何も書かれていない。          桃郎は固唾をのみ、慎重に適当なページを開いた。  その刹那。彼は暗室から明るい外に出たような、そんな感覚になった。  な、なんだったんだ一体。  そしてノートに目をやると、そこには何も書かれてなく、白紙だった。一からページをパラパラとめくって確認してみたが、すべてのページに何も書かれていなかった。  桃郎は急に怖くなって本を放り投げ、走って路地裏を出ていった。  家についた桃郎は気分を紛らわすためにテレビをつけた。  日本と鬼はこれまで度々戦争を繰り返してきましたが、今日蟹水首相は休戦を発表しました。次のニュースです── 。
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