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第二章 第三の世界とパラレルパラダイムパラダイスパラパラパーティー
世は泰平の徳川天下。一七五四年、宝暦四年。水戸藩の南東の海岸近くの館。
お嬢様ー!お嬢様ー!と廊下で声が聞こえる。まったく、どこ探してんだか。館の中を探しても私は外の本の上にいるから見つかんないっての。
その彼女は、由緒ある館の姫、四ノ宮裏姫。 「はーあ、退屈すぎる。どっかにイケメンの殿様でも落っこちてないかしら。」
裏姫は木から降りて自分の部屋に戻った。そして父にこっぴどく叱られた。
「まったく、今日は茶道の習い事を放り出してかくれんぼか?世話が焼ける子だよ。そんな悪いことをしてると鬼に食べられちゃうぞ。東北では飢饉で苦しんでいる人がいるというのに。」
鬼? そいつは最近は活動してないじゃない。それに飢饉?それは私には関係ないでしょ。
「まあいい、この時間は近所の神社参りだ。行くぞ。」
「はーい。」
そして四ノ宮一行は神社へと向かった。
ここは中規模の大きさの蛇潮神社。裏姫はいつもの境内のはずなのに、何かしら異変を感じた。誰かに見られている? 裏姫はあたりを見回したが何もなかった。
「どうかしたか?」
「いえ、何でも。」
裏姫は小首をかしげ、また歩き出した。
「ちょっと厠。」
そして裏姫は本殿の裏にある厠(トイレ)の方に歩いていった。
厠を済ませ出ると、本殿の裏に、いつもは閉じられている扉が開いていた。裏姫は好奇心のままにその中へ入っていった。大きさは一辺二mの狭い空間だった。その中に神棚があり、一番上に本が乗っかっていた。 手を伸ばして確認してみると、すごい埃をかぶっていて、表紙にも背表紙にも何も書かれていなかった。不気味さを少々感じたが、好奇心の方が勝ってしまった。
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