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ノックの音に答えると、ドアがスライドした。
「美織。」
現れた母は、前見た時よりもやつれているように見える。
「ごめんなさい、お母さん。」
胸が、苦しい。
謝っても、謝っても、足りない。
「ごめんなさい。負担をかけて、ごめんなさい。いい子じゃなくて、ごめんなさい。お母さんとお父さんをつなぎとめられなくて、ごめ―――」
その時、何かが頭を包み込んだ。
遅れて、鼻に入ってくる香りで、母が私を抱きしめているのだと気が付く。
「美織。美織はね、そのままでいいの。私の―――お母さんとお父さんの、大事な娘なんだから。」
「でも―――」
だからと言って、負担をかけていい訳がない。
そんな言葉を、母は抱擁で再びさえぎった。
「いいの。大丈夫だから。愛は、偉大なのよ。」
愛。
わからない。
段々と薄れてゆく意識の中、母のささやき声が聞こえた。
「美織、愛してるわ。今まで気が付かなくて、ごめんね―――」
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