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令和6年3月10日の14時40分頃、閑静な住宅街の一角で殺人事件が起きた。
被害者は28歳の主婦で、突然押し掛けた強盗に包丁で胸を刺されて死亡。犯人は証拠隠滅のため犯行後家に火を放ちそのまま逃走。未だに捕まっていない。
当時0歳8ヶ月だった息子は火がまだ回っていない場所にいたため奇跡的に無事だった。
それが敦だ。
夫はひどく悲しみ、食事も喉を通らず痩せ細っていったが、息子を守れるのは自分しかいないので必死に生きた。
立ち直るきっかけになったのは、当時夫の職場の後輩の存在。彼女の支えがあって夫は生きる気力を取り戻した。そして、2年後に再婚し、娘が産まれた。
彼女は敦にとっても良き母となり、二人に対して分け隔てなく愛情を注いだ。
だから敦も新しい母によく懐いた。
……表向きには、そういうことになっていた。
***
「俺の母さんは、病気で死んだんじゃないのか?」
兄が震えた声で私に訊ねてくる。
「違うよ、敦兄ちゃん。✕✕✕……私のママは、パパと結婚するために、ここにいる敦兄ちゃんの本当のママを殺したの。人を雇ってね」
「嘘だろッ!?」
私は冷静に兄に真実を語る。
(巻き込んでごめんね、敦兄ちゃん。私は知ってて今日この場所に来たんだ)
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