はじめましての貴方に、ただいまを言いたくて。

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「ママは、この男に人殺しを依頼するために水商売で貯めた500万円を支払ったの。この真相に、警察は気付けなかった――敦兄ちゃんが間違って認識していたのも仕方ないね。あんな事件があった後なのに2年でパパとママが再婚したんだもん。周りも腫れ物扱いして、本当のことを教えてくれなかったから病気と思い込んでいたようね」  隣で黙って聞いている兄の母は、今にも気絶してしまうのではないかと思うくらい真っ青になっていた。  彼女にとってもこの事実は受け入れがたい内容だったと思う。  自分が死んだ後この家は燃えて、思い出の品は失われてしまう。それを悲しんだ父も2年で別の女と再婚し、真実は闇に埋もれてしまうのだから。  私はそれを止めに来た。  だから、この日に……強くなった兄と一緒じゃないとダメだったんだ。 「ねぇ、今の話が本当なら……茉央は」  彼女が何かを察したようで、私に話しかけてきたが、同じタイミングで玄関のドアが開き駆けつけた警察によって遮られた。
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