はじめましての貴方に、ただいまを言いたくて。

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***  時は一週間前に遡る。 「敦兄ちゃん、例の都市伝説を試したいの。手伝って!」 「おお?どうした茉央!急にかしこまったりして」  部屋で二人きりの時に、私は正座で両手をパンと合わせ神頼みをするような姿勢で兄に向かってお願いをする。  高校二年生の兄、敦は突然の私のこの様子に驚き、クリクリの丸い目を更に見開く。 「この街には不思議な噂が沢山あって、その中の一つ……駅前のXビルのエレベーターに0時0分00秒に乗って最上階まで行き、各階に停止しながら降りた後行きたい日付と時刻を押してもう一回乗ると、その日にタイムスリップできるってやつ!あれを来週の土曜日に試したいの!」  私が勢いよく早口で説明したものだから、兄は半分ぐらいしか把握できなかったと思う。だが、単純な兄にはそれくらいが丁度よい。 「それで、死んだママに会いに行きたいの!お願い、ついてきて!」 「ええ!何で急に?」  大袈裟なポーズで驚きの意思表示を示す兄に、私は少しだけ喋るスピードを落としながら理由を述べる。 「今度学校で家族の歴史みたいなのを纏めて発表することになったの。でもママの顔思い出せないし、思い出の写真は全部火事で燃えちゃったっていうし……だから見に行きたいの!行ってママに会ってみたいの!」 「中学校ってそんな課題あったっけ?いやでも茉央はさ」 「細かいことはいいの!敦兄ちゃんだって以前会いたいって言ってたじゃん!」  兄の言葉を遮り、私は自分の思いを主張した。 「敦兄ちゃん。この都市伝説は、日頃から清く正しく生きてきた人だけが経験できるご褒美とも言われてるんだって!私も兄ちゃんも、ずーっと頑張ってきたじゃない!きっと叶えてもらえるはずだよ!」 「そ、そうなのか?確かにオレは頑張って鍛えてきたが、それだけだぞ?」  兄は自身を指差し心配そうに訊ねるが、私はそんなのお構いなしと言わんばかりに目を輝かせた顔を近づける。 「それでいいの!十分だよ!だから試してみようよ、成功したらラッキーぐらいの感覚でさ!」
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