2人が本棚に入れています
本棚に追加
目を覚ましたとき、私の手に子どもはいなかった。婆に聞けば、神が持って行ったのだと言う。
「もう暫く休んでいなさい、サエ」
「サエ? 私、私は……」
私は、サエ? キエ? どちらだろう。否、姉など私にいただろうか。
疑問が残ったが、まあいいか、と床に伏せる。神の子を産めば巫女としての職務は終わりだと言う。明日からは普通の日々が始まる。
何をしようか。
そんなことを考えたが、今は何も思いつきそうにない。
ただ、ぽかりと空いた充足感だけが私の中に満ち溢れていた。
最初のコメントを投稿しよう!