回帰の儀式

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 目を覚ましたとき、私の手に子どもはいなかった。婆に聞けば、神が持って行ったのだと言う。 「もう暫く休んでいなさい、サエ」 「サエ? 私、私は……」  私は、サエ? キエ? どちらだろう。否、姉など私にいただろうか。  疑問が残ったが、まあいいか、と床に伏せる。神の子を産めば巫女としての職務は終わりだと言う。明日からは普通の日々が始まる。  何をしようか。  そんなことを考えたが、今は何も思いつきそうにない。  ただ、ぽかりと空いた充足感だけが私の中に満ち溢れていた。
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