回帰の儀式

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 かつて愛した者がいた。  愛ゆえに交わった。  子を設け、しかし愛する者はそれを産むことなく死んだ。  その魂を私は食らい、腹の中で大事にし続けた。  いずれ再び肉体を持たせ、再び出会うために。  けれど、神の寵愛は人の身で受けきれるものではなかったのだと誰かが言った。  ならば、ひとりの身では耐え切れぬならば、ふたつに分ければどうだろうか。  ふたつに分けた肉体の片方に神を宿し、その肉体をもう片方が食することによって、この愛を受け止められるだけの肉体ができはしないだろうか。  二つの個体を用いたが、失敗した。  ならばと腹の内から二つに分けた子らで試した。  一組目は失敗した。  二組目は、惜しいところまでいった。  三組目は……  長いこと待った。  とてもとても長い間待っていた。  生まれたての子に愛しい人の魂を注ぎ込む。 『約束だ。お前の魂をもとに還そう』
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