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軋む音がした。
何が軋んでいるのかはわからなかった。一人用の木製の寝台が、二人分の重さに――それも動いている――耐えきれず立てた音かもしれないし、胸の中の蟠りがその重量に悲鳴を上げた音かもしれない。
どちらでも良かった。
仰向けの姿勢。見上げた先には姉がいる。一糸纏わぬ姿で、姉が体を揺すっている。透き通るような夜色の髪、白い肌。赤らんだ頬に汗が伝う。
対する私も、着ていた服はとうに脱ぎ払った。普段、人前で表に出すことさえない繁みの奥の谷地をすり合わせる。谷底より突き出た突起に触れれば、そこを震源に前身に衝撃が亘る。
「サエ」
名前を呼ばれるのと、頬に手が触れたのは同時だった。見上げれば、姉が心配そうにこちらを見ている。
「明日のことが不安?」
どこか上の空なのはバレていたようで、姉の言葉に溜め息をつく。
不安にならないわけがない。
「……キエは、不安じゃないの?」
だから、逆にそう聞き返す。
「私は、平気よ」
そう笑ったキエの声が震えているのが、わかる。否、言葉など交わさなくてもわかるのだ、私たちは。
不安を紛らわすように姉は、キエは腕を伸ばして私の体に密着した。服越しではなく、直接肌で触れ合うこの距離が、私たちはとても安心する。
「まるで、子どもに戻ったみたい」
「当たり前よ。生まれる前は、ずっとこうしていたんだから」
キエの言葉に、私は笑って返す。
こうして密着していると、それまでの不安が嘘のように消えてしまう。きっと、母親のお腹の中で守られていたときの気持ちになるからなのだろう。そのときから私とキエは一緒で、こうしてお互いに生まれる日を楽しみにしていたのだ。
そんな、残っているはずのない遠い記憶を遡りながら、私たちは触れ合いを再開する。ぎし、と木製の寝台が軋む。そんな不満そうな声を出さなくてもいいだろう。
明日以降は、もうこんなことは有り得ないのだから。
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