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この映像には霊的現象が映っている可能性があります。自己責任でのご視聴をお願いします。
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「皆さん、こんばんは。恐怖墓チャンネルの時間がやって来ました。現在我々は、和歌山県の山中にある、とある廃墟の前に来ています」
黄色いニット帽を目深にかぶった本木が、四角い建物の残骸にカメラを向けた。コンクリートの表面には亀裂が入り、絡まった蔦は枯れ、老女の髪のようにだらりと覆いかぶさっている。割れた窓ガラスの奥は底なしの闇だ。打ち捨てられた建物は死体となり、からっぼの眼窩を晒していた。
「山の麓には丑の刻参りで有名な神社があり、上流のダムは自殺の名所になっています。それほど険しい山ではないのですが、毎年数多くの行方不明者が出ており、地元の人たちは『残酷山』と呼んで、決して近付こうとしません。そういうすさまじい場所なので、今夜は何かが起こるかもしれません」
赤いジャンプスーツに身を包んだミレイが、いつものポーカーフェイスで話す。
「それでは早速、中へ入ってみましょう」
青いキャップに黒マスクの徳田が、懐中電灯を手に先陣を切った。
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