残酷山怪異譚

1/17
前へ
/17ページ
次へ
 この映像には霊的現象が映っている可能性があります。自己責任でのご視聴をお願いします。 ※ 「皆さん、こんばんは。恐怖墓チャンネルの時間がやって来ました。現在我々は、和歌山県の山中にある、とある廃墟の前に来ています」  黄色いニット帽を目深にかぶった本木が、四角い建物の残骸にカメラを向けた。コンクリートの表面には亀裂が入り、絡まった蔦は枯れ、老女の髪のようにだらりと覆いかぶさっている。割れた窓ガラスの奥は底なしの闇だ。打ち捨てられた建物は死体となり、からっぼの眼窩を晒していた。 「山の麓には丑の刻参りで有名な神社があり、上流のダムは自殺の名所になっています。それほど険しい山ではないのですが、毎年数多くの行方不明者が出ており、地元の人たちは『残酷山』と呼んで、決して近付こうとしません。そういうすさまじい場所なので、今夜は何かが起こるかもしれません」  赤いジャンプスーツに身を包んだミレイが、いつものポーカーフェイスで話す。 「それでは早速、中へ入ってみましょう」  青いキャップに黒マスクの徳田が、懐中電灯を手に先陣を切った。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加