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※
「うわっ」
徳田が突然大声を上げ、頭を抱えた。
「何? どうした?」
本木が慌てて懐中電灯を点灯する。
「今、頭の上をスッと何かが通った」
首を竦め、キョロキョロと周囲を見回す。
「なんだ、コウモリじゃない」
ミレイが部屋の隅を指さして言った。「怖がりね」と小声で付け加える。
徳田が照れ隠しに咳払いをして言った。
「病院が閉鎖された後は、ある宗教団体が建物を買い取って集団生活を送っていました。その教団も信者が次々と行方不明になり、いつの間にか解散していたといいます」
「地元の人はこの山を残酷山と呼びますが、私にはこの建物こそが忌まわしい磁場を発しているように思えてなりません」
ミレイが後を引き取って締めくくる。
その時、カメラを回していた本木が「しっ」と人差し指を立てた。
「何か聞こえる」
息をひそめて耳を澄ます。
「人の声だ」
三人の顔が強張った。雨音に交じって、微かだが、話し声のようなものが聞こえる。
「何か言ってるぞ」
離れた場所から聞く雑踏の騒めきのようで、何を言っているのかよく分からない。
「ねぇ、スワ……、スワスって聞こえない?」
ミレイがそう言った時、突然徳田が「ワーッ」と絶叫した。恐怖に目を見開いたまま、懐中電灯を天井に向ける。
「おい、見ろ!」
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