残酷山怪異譚

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 丸い光の中で、黒カビに浸食された天井が、ざわりと蠢いた。 「キャー!」「ギャーッ」  口々に悲鳴を上げ、三人は転がるように部屋を飛び出した。その後を追って、天井にぶら下がっていたものが一斉に飛び立つ。 「スワス……、スワセ……」「スワスカ……」「スワス……、スワ……、スワセロ……」  全速力で駆ける三人の背中に、不気味な声が迫る。 「助けてー!」 「勝手に入って、ごめんなさい!」  泣き声を上げて逃げ惑う三人を、無数の羽音が追いかける。       ※ 「ホホホ……。みんな、喜んでるわ」 「パパ、あの人たちも、フロウフシが好きだといいね」 「ハハハ、ミヨ子は優しい子だな」  吸血鬼の親子が、手をつないで窓辺に立っている。 「ほら、ミヨ子」  シンイチが床に落ちていた人形を拾い上げ、妹に返してやる。 「あのぉスミマセン、院長先生」  四人が振り向くと、そこには顔色の悪い、痩せた男が立っていた。 「やぁ、君は新入りの、池田君だったね。どうだい、バンパイアライフにはもう慣れたかね?」 「元々夜型だったんで、楽勝っす。コウモリに変身する術も習得しました。空を飛ぶのは楽しいです」 「それはよかった」
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