残酷山怪異譚

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「それが……」と頬を掻きながら、池田がズボンのポケットからスマートフォンを取り出した。 「あっ、それ電話にもテレビにもなるやつだね!」  シンイチが目を輝かせる。 「シンイチ君、また見せてあげるよ。院長先生、実はあいつら、生配信中なんすよ」 「生?」と首を傾げる一家に、池田がスマートフォンを見せる。激しく揺れ動く画面に、ミレイの背中や建物の壁が細切れに映し出される。同時に三人の悲鳴や足音がはっきりと聞こえた。 「これは驚いた! 生放送しているのか」 「凄いわ、テレビ局だったの?」 「いや、そうではないんですが」 「ねね、文字がいっぱい出てきてるよ。天井にコウモリ大量。コウモリの糞って吸い込むとヤバいらしいよ。ワハハ命懸けだね、だって」 「チャットといいまして、これを見てるやつらが勝手にしゃべくってるんですね」 「ほう、視聴者が放送と同時に意見交換できるのか。便利な世の中になったなぁ」  感慨深げにスマートフォンを覗き込む夫の腕に、妻の鋭い爪が立った。
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