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「うわ、入口がえらいことになってる。落書きがひどい。かなり荒らされてる。これは自転車ですね。ガラクタがまるでバリケードみたいに積み重なってます」
ミレイを手助けして中へ入ると、そこは開けた円形の空間だった。壁は陰気なグリーンで、塗装は殆ど剥げ落ちている。細長い廊下が、奥に向かって真っ暗な口を開けていた。
「中は意外と荒らされてませんね。ガランとして、カレンダーやポスターが床に落ちています」
「ミレイさん、何か感じますか?」
本木に聞かれ、ミレイが付けまつ毛に縁取られた目を閉じた。
「気配はあります。見られているという感覚が強いです。あ、今」
見開いた目を廊下に向ける。
「あちらから、ザザッという音がしました」
本木が慌ててカメラを向けた。
「行ってみましょう」
息の混じる声で呟く。
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