残酷山怪異譚

2/17
前へ
/17ページ
次へ
「うわ、入口がえらいことになってる。落書きがひどい。かなり荒らされてる。これは自転車ですね。ガラクタがまるでバリケードみたいに積み重なってます」  ミレイを手助けして中へ入ると、そこは開けた円形の空間だった。壁は陰気なグリーンで、塗装は殆ど剥げ落ちている。細長い廊下が、奥に向かって真っ暗な口を開けていた。 「中は意外と荒らされてませんね。ガランとして、カレンダーやポスターが床に落ちています」 「ミレイさん、何か感じますか?」  本木に聞かれ、ミレイが付けまつ毛に縁取られた目を閉じた。 「気配はあります。見られているという感覚が強いです。あ、今」  見開いた目を廊下に向ける。 「あちらから、ザザッという音がしました」  本木が慌ててカメラを向けた。 「行ってみましょう」    息の混じる声で呟く。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加