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しかしここは、全くの廃屋ではなかった。
「パパ、ママ、また誰か入って来ちゃったよ」
シンイチが言うと、妹のミヨ子が遊んでいた人形を放り出した。
「やだぁ、怖いよう」
泣き声を上げ、母親にしがみつく。
「ミヨ子は弱虫だなぁ。僕はへっちゃらさ。どんな奴らか見てこようか?」
「これ、止めなさい、シンイチ」
母親がシンイチをいさめ、ミヨ子を優しく抱き寄せた。
「大丈夫よ。隠れていれば、何処かへ行っちゃうわ。あなた、バリケードをもっと強化してくださいな」
「やってもキリがないよ。本当に迷惑な奴らだ」
父親がため息をつく。
「しっ、静かに」
侵入者の足音が近付いてくる。
「皆、隠れるんだ」
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