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「階段を上って、三階へやって来ました。暗闇の密度が濃くなったように感じます。ミレイさんが一番気配を感じるのは、この辺りですね?」
本木の質問にミレイが頷く。
「ええ。さっき、こちらの方から赤ん坊の泣き声がしました。何か匂いますね。獣臭でしょうか」
先頭を歩いていた徳田が振り返って言った。
「この部屋に入ってみましょう。あれ、これは物干しですね。靴下が干したままになっている。カーテンはボロボロです。もとは白かったんでしょうね。カーテンを捲ると、おっ、これはステンドグラスでしょうか。こっちのドアはベニヤ板で塞がれてます」
懐中電灯の明かりが、舐めるように床を這う。
「うわ、びっくりした。人形です。日本人形が落ちてます」
せり出した腹を窮屈そうに太腿の間に納め、人形を拾い上げてカメラの前に差し出す。
「そうとう古いもののようです。気味悪いですね。髪が抜け落ちてます」
「どうでしょう、この部屋がいいと思うんですが」
本木の意見にミレイも頷く。
「この人形を輪に入れて、始めましょう」
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