残酷山怪異譚

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 三人は床に人形を置き、車座になって座った。懐中電灯やヘッドライトを全て消し、霊体を捉えるとそこだけ暗色に映るサーモカメラを設置する。 「これから我々は、この地にまつわる怪談を話します。全て実話です。怪談が霊を呼び寄せ、その姿をカメラが捉えるかも知れません。それでは、僕から」  本木が厳かな声で話し始める。 「これは友達のKが体験した話です」  Kの祖父母の家の裏には、小さな池がありました。溺れた子供が何人もいるから、決して近づくなと言われていましたが、好奇心旺盛なKは、大人の目を盗んで時々池を見に行っていました。  というのも、池には主と呼ばれる大きな鯉が棲んでいたからです。運が良ければ深緑の水を通して、一メートルは優に超える主の姿を垣間見ることができました。小学生だったKにとって、それは途轍もなく大きく、畏怖堂々として見えたのです。  やがて祖父母が亡くなり、Kは高校生になりました。ある時、Kは友人に池の主の話をしました。その友人は釣りが趣味でした。一緒に主を釣りに行こうと誘われ、Kの胸に後悔が過りましたが、感傷的だと思われたくなくて承諾しました。  次の土曜日、二人はバスを乗り継ぎ、Kの祖父母の家にやって来ました。釣りのついでに、今は空き家となった家で、一泊する予定でした。
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