残酷山怪異譚

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 元々小さかった池は、更に縮んだように見えました。こんな水たまりのような池に本当に主がいたのか、Kでさえ疑問に思ったそうです。  ですが釣りを始めてすぐに、友人の竿に大きな当たりがありました。二人がかりで引き上げようとしましたが、物凄い力で抵抗されます。主に違いありません。しかしあっけなく糸が切れ、逃げられてしまったのです。その頃には、密かに抱いていた主への畏怖は消え、ひたすら残念な気持ちがしたそうです。  その日はそれきり、何の当たりもありませんでした。明日に望みを託し、二人は祖父母の家へと引き上げました。  夜になり、大人がいないことをいいことに、二人は酒を飲んで夜更かしをしていました。その時、家の裏手からバシャバシャと水音がします。誰かが忍び込んで、主を釣ろうとしているに違いない。そう思った二人は、獲物を取られては大変と慌てて池に向かいました。  しかし、あと少しで池に辿り着くところで、二人は立ち竦みました。月明かりに照らされ、池は古代の鏡のように鈍く光っていました。その縁に裸の子供が立っていたのです。子供は暴れる主の口を素手で掴み、真っ二つに引き裂こうとしていました。Kと友人は思わずワッと声を上げて逃げ出しました。  二人が見た子供は両目が黄色く光り、全身の皮膚は真っ青で、まるで河童のようだったといいます。  僕の話しはこれで終わります。
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