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「それ、もしかすると、僕のことかも知れない」
屋根裏に隠れ、本木の話を聞いていたシンイチが言った。
「でもひどい誤解だ。あの時は、池の主が喉に釣り針が刺さって痛がってたから、取ってあげてたんだ。それに僕は河童じゃない!」
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「カメラに反応はあった?」
「何も」
ミレイが本木に素っ気なく首を振る。
「次は俺の番ですね」
徳田がもぞもぞと尻を動かしながら言った。
「これは俺が大学時代、まだ霊の存在を信じていなかった頃、実際に体験した話です」
当時付き合っていた彼女と、ドライブをしていた時のこと。夜景を見に行った帰り、いつの間にか道を間違えていることに気が付いた。曲がりくねった山道で、走っているのは俺たちの車だけ。ナビだと道のないところを走っている。引き返そうにもUターンできる場所がない。仕方なく、どこへ続くとも分からない道を走っていた。
翌日は朝からバイトだという彼女はむっつりと黙り込んで、前方を見据えている。車内には険悪なムードが漂っていた。気まずい思いでいた時、彼女が「あれ?」と声を上げた。俺の太腿に手を置いたかと思うと、すごい力で掴んでくる。
助手席の方を見て、ぞっとした。赤いランドセルを背負った女の子が、窓の向こう側にいる。深夜の山道を、小学生の女の子がたった一人で歩いている。しかも車と同じ速度で。
この世のものではないと思った。どうにか山を出て街の明かりが見えた時は、恥ずかしながら涙が出たよ。
俺の話しは以上です。
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