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青い鳥は、そばにいる
わたしは、また一人、歩いて家に帰った。
「なんだか、また寂しくなったわ」
もう遅いし、歯を磨いて寝ようと思って、鏡を見た。
「ヒ、ヒゲが、なくなってる……」
あれほど濃かったヒゲが、ほとんど消え去っている。
それから急いで胸を、触ってみた。
「も、元の大きさに戻ってる!」
気が付けば、ぺったんこになりつつあった胸が元の大きさに戻っている。
びっくりした。オス化症候群が、どこかに行ってしまったかのようだった。
「な、何だかよく分からないけど、これって治ったってことなの?」
私は横になりながら、あったことを思い出していた。
本当の幸せとは、何だろうか。
それは、心の底から、楽しいと思える時間を、本当に大切な人と、分かち合う事じゃないのだろうかと。
「私、もしかしてあの変な生物ヲタのことを……」
好きになってしまったのかもしれないと、思わざるを得なかった。
「でも、何かちょっとヤダなぁ。あの人、人類の目標はセ◎クスですって大声で叫ぶんだもん」
そう言いながら、私はくすくすと笑っていた。
「でも、何で正装で来たのかしら。おかしな人……」
ただ、それは彼なりの純真無垢な、本当に純粋な愛の表現だったのだろうと、私は思った。
「だから私、涙が出たんだ。偽りのない、ストレートな感情表現だったからなんだと思う」
私も今まで、告白やらされなかったこともない。
でもそれはどこか、私が一流企業のOLだからとか、胸が大きいとか、そう言うところを好きだと言ってくれたんだと思えて来た。
「私の存在、そのものを、彼は好きだと言ってくれたんだ……」
また、胸が熱くなってきた。
そんなことを考えていると、私はいつの間にか深い眠りについていた。
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次の日、わたしは恵田先生に会いに行った。マスクはもうしてない。
「あら、いらっしゃい」
会うなり、恵田先生はニヤリ、と笑った。
「見付かったのね、あなたの幸せ」
「はい、ありがとうございました!」
わたしは、心の底からありがとう、と言った。オス化症候群のお陰で、わたしは本当の幸せを見付けたのかもしれない。
私は思った。青い鳥はきっと、そばにいるー。
~おわり~
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