友達の昔話

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友達の昔話

 希の言葉に内心、ムカッと来たけど。ここで言い返したら、大人じゃない。 「そうね。もうすぐ30代後半だから、希ちゃんみたいに幸せに結婚して、子育てでもしたいわ。それに、最近ちょっと疲れ気味だし」  すると、なぜか希はにやっとして、 「でしょ? 誰でも悩んでるのよ。みんな満たされてないのよ」  自分に言い聞かせるように言った。  ランチが、まずくなる。一体、何のためにこの人は、わたしを呼んだの?憂さ晴らしのため?  わたしは、話題を変えて昔の友達とか、おいしいお店の話とか、してみた。それなりに、話は弾んだ。でも、何かがおかしい。 「あー、おいしかった。わたし、そろそろ仕事に戻らなきゃ。お金、ここに置いとくわね」  お釣が来る1500円を置いて、立ち去ろうとした。ところが。 「真琴ちゃん。今度の日曜日、ヒマ? すごくためになる、いい話をしてくれる人がいるのよ。きっと悩みも、すっきりするはずよ」 (いい話? ためになる? なに、それ?)  希は、堰を切ったように、その「いい話をしてくれる人」の話を5分ばかり演説した。  昔、イケイケだった自分が、そんな考えを改め、人のためにボランティア活動をするようになったきっかけだと、希は力説した。わたしは、うわの空で聞いた。 「……でね、『幸せの青い鳥研究会』っていうの。自分の幸せについて考える、サークルみたいなものよ」 (……興味ないって、言ってるのに) 「うん、分かった。じゃあ、また」  行こうとしてるのに、散々その人と青い鳥の会ことを聞かされた。  わたしは、イラッとしながら店を出た。 (ったく、そんなことを聞かせるためにわたしを呼んだの?)
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