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4話:山火事
リオナさんと話した日、中学校から帰ってきた妹様を捕まえる。
追い掛けると躓いて転んだ。
躓いて咄嗟に力んでしまったらしく、腰を痛めたみたいだ。
「ひどい姉かな」
「言われてたまるか。気づかなかった私も悪かったけど、一体どんな大義名分で情報収集するつもりだよ」
「もう少し前なら自由研究で十分行けたと思っている。本当は学級新聞にガチ情報を乗せたいとか考えていたけどね。今は個別に事件を思っている正義感強い人。ちなみに次は、」
妹様はなんて言っただろうか?
次があるのか。
また会わなければならない人がいるらしい。
「明日かな」
「急すぎない?」
「大学生なんてどうせ暇」
妹様は失礼である。
これ以上文句を言っても仕方がない。
翌日、次の現場に向かう。
私よりも背が低めで威圧感が全くない柔らかい物腰の敦隆さんと、背が高く腰回りがすっきりした詩さん。
妹様が話すための半個室を探したのだが、自分で焼くお好み焼き屋とはどういう考え直だろう。
私は鉄板の上のお好み焼きがうまくひっくり返せずに苦戦していた。
もっと話に集中しやすい料理屋はなかったのだろうか?
「私は情報を集めるために来ました。ダイレクトメッセージをしていたのは妹です。わざわざ時間を取ってごめんなさい。妹は中学生で、変なことを言う人ですから。宇宙人なんてよく分からない、」
私としては先に謝っておこうと思っていた。
だが、その視線が、唇が震えていることに気づく。
そうか。
妹はああ見えて天才様なのか。
「シャシャさん、話を聞いてほしい。そう思っているわ」
「俺とウタが知っていることを話す。俺は鈍感でその場では分からなかったんだが、ウタは違う」
「私は感じたわ。あれは間違いなく地球人ではなかった。もちろん、翻訳機が対応していない言語だって存在する。けど、あの場所で、聞いたことがない言葉を話していた。私たちはルートを変えて逃げてきた。私たちはあと少しでどうなるか分からなかったわ」
ウタさんは気迫を込めて言う。
頭の整理はできない。
「整理して聞きます。教えてください。まず、宇宙人だと分かった理由を教えてください」
「山火事で、必死に逃げていたら誘導の方がいて。日本人らしくはなかったから、誘導の方同士で他の言語でやり取りしているみたいだったから。翻訳機能を使おうと思ったらエラーが出た」
ウタさんは熱いお茶を啜りながら、アツタカさんと手を繋いで言う。
まだトラウマなのだろう。
やはり宇宙人がいる?
「それだけでは宇宙人だと断定できません。何か他に聞かせてくれませんか?」
「事件なのは確かだ。誘導された人々の数は生存者の数と全く合わない。誘導された人々は全員行方不明になっている」
もしルートを変えて逃げなければ、二人はどうなったか分からない。
……リオナさんは行方不明側ということ?
「山に遊びに行った日、何をしましたか?」
「四輪バギーに乗りながら空間ディスプレイ上でシューティングゲームをしたわ。もちろん私の勝ちよ?」
「なんだと? その後、躓いて転びそうになったくせに」
……なにこの痴話喧嘩。
全く何を見せられているのやら。
山火事の件で弱っていると思ったが、意外と元気らしい。
愛する者が隣にいるからだろうか?
私だってモテる。って思っただけでも負け組みたいだ。
「それから俺たちは洞窟に行って、お揃いのカーディガンを着た。値札付いていたけど」
「いいでしょ? 急いで準備したもん。ちょうどいい温度だったし、水晶も見られたしよかったでしょ?」
ウタさんは拗ねて頬を膨らませる。
うん、私は何を見ているんだ?
「それと山の神を見た。洞窟の壁に儀式のようなものが描いてあった」
「うん。その後は湧水を飲んだわ。美味しかった」
「小鳥が見たいって言ったから剥製の展示を見た」
「あれは絶対違うわよ。小鳥のさえずりが聞こえたから見たいと言ったのに、剥製はちょっとかわいそうでしょ」
私の妹様もやりそうだ、と思ってしまった。
言わないつもりだが。
「そういえば、湿っているところでは火事になりにくい。湧水を含めて水が豊富なはず。違和感はありませんでしたか?」
「そういえば案内板? が黒かったわ」
「ウタ、よく覚えているな」
「言ったでしょ、いろいろ不気味だったって。それから星を見て、アツタカがトイレに言った瞬間に山火事。でも正確には放火よ。それで逃げていたら誘導の人がいて。実は火を放ったのは宇宙人に決まっているわ。身長は地球人の半分で、二人で地球人のふりをしていたと思う。混乱していたから難しいけど」
「パニックになっておかしくなった人を演じながら別ルートで山を下りた。今思えば、別ルートで簡単に逃げられたのもおかしい。命の危険よりも一人でも多くそのルートで進ませようとしていたみたいだ」
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