電話ボックス

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「何で先に、それもこんなにも早くいっちまうんだよ……。お前がいないとつまんねぇじゃん……」 通夜に参列した俺は、硬く目を閉じた親友に悪態をついた。 ーーごめんって! 泣くなよ! お前が泣いたらオレまで泣きそうになるからさぁ! あいつが生きていたらきっとそう言った。いや、これはホラー映画だと聞いて見せられた映画が予想外に切ない映画だった時に実際に言われたことのあるセリフだ。 あぁ、もうそう言って痛いくらいに背中を叩かれることもないのか……。 「くそ……」 悪態をついたところで親友は帰ってこない。 だけど壁を殴っていないと大声で小さな子どものように泣いてしまいそうだった。 もう一度話したい。 もう一度あいつの能天気な声が聞きたい。 女々しいと言われても、あまりにも唐突な別れだったのだ。少しくらいあいつがいなくなった現実に打ちひしがれたっていいじゃないか。 その時だった。 親友との約束を思い出したのは。 「そうだ……。そうだった」 通夜の会場からだと山中の電話ボックスまで3時間もかからないだろう。 今から行けば、10時半すぎくらいには着けそうだった。 「……行くか」 最後に親友の母親に挨拶をして、俺は通夜の会場を後にした。
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