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いつまで経っても相手は無言。だけど確実に誰かがいると俺の勘が告げていた。
「……ゆう、せい?」
しびれを切らした俺は受話器の向こうに呼びかける。
『映斗か。約束、守ってくれたんだな』
返ってきた声は俺が望んだ人の声だった。
ただいつも聞いていた明るさはなく、暗く沈んだ声だった。
約束を守ってくれて嬉しい、というような感情は一切伝わってこない。
ただ淡々としたトーンで、きっと目の前にあいつが……祐正がいたなら虚ろな目をしているんじゃないかと思うような声音だった。
だけど相手は亡くなっている人物だ。明るい声というのもイメージがないかもしれない。
……そうだ。相手は、もう電話に出れない相手のはず。
それなのに今、受話器から聞こえた声は祐正のものだった。
あれだけ散々聞いてきた祐正の声を聞き間違えるはずもない。
そう思った瞬間、俺の背筋に冷たい汗が伝い下りた。
親友と電話をしているだけなのに、怖い。
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