電話ボックス

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「な、なんだ?」 受話器を持つ手に汗が滲む。 背中を冷たい汗が伝い落ちる。 暑いわけじゃないのに、むしろ夜の山の中なだけあって肌寒いくらいなのに。 心臓が痛いほどに脈打つ。 今すぐ受話器を置け、と直感が言っている。 それなのに体は動かない。むしろ受話器を少し耳に近づけてしまった。 『なぁ』 再び聞こえた祐正からの呼びかけ。 『お前も来いよ』 次に聞こえた声は、誰のものかもわからない低い低い地の底から聞こえてくるかのような声だった。
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