山高きが故に

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 恵み豊かなユクレナ山の頂きで、未知なる鉱石が発見された。  ソレは万能石と名付けられ、どんな病も怪我も治すという。  元々医療分野に秀でた国のこと、その発見に国中が沸き立った。  山頂での採取のために、山は切り開かれ、道が作られた。  それ以外にも、盗掘・盗難防止のために兵や設備が設置され、絶えず人が出入りする。  そのうちに、ユクレナ山はどんどん荒れていくが、万能石に目が眩んだ者達は気づきもしない。  そして、加熱する万能石の研究により、不老や長寿の効能まで見出されることとなる。  すると、今度は不老長寿の夢を見た権力者によって、瞬く間に国家間での激しい奪い合いへと発展した。  その争いの果てに広がるのは、戦火に焼かれたユクレナ山。  生命に満ちあふれ、豊かだった美しい山の姿は、もはや見る影もない。  万能石は、幻獣種ガーヤがその能力を持って生み出したモノ。  調整と循環により、周りの種が繁栄し、満たされた時に発する陽なる力が山の頂きに降り積もり、凝ったモノ。  当然、荒れ地となったユクレナ山では、今後採取できなくなる。  掘り尽くされて、終わり。  そして、ソレを生み出すために必須な、その地の幻獣種ガーヤはこの騒動で滅びてしまった。  だから、ユクレナ山が元に戻ることはない。  幻獣種ガーヤの天敵は、人であった。  けれども、その滅びの前に真実に辿り着き、ユクレナ山から幻獣種ガーヤをわずかに連れ出したのも、人。  共生を心に刻み、幻獣種ガーヤを保護した地。  その地はまた長い時を経て、栄えていくことだろう。  その中には、意図せず絆を結び、幻獣種ガーヤの子を連れ帰った、ルナの一族が治める地も含まれている。 ――――――山高きが故に貴からず
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